40代は「アンチモデル」から学べ

若い頃は「憧れの人物」がいたもの。しかし、最近はどうも人の悪いところばかりが目立つ。仕事の「ロールモデル」はどこに求めればいいのでしょうか。

大塚 寿『できる40代は、「これ」しかやらない 1万人の体験談から見えてきた「正しい頑張り方」』(PHP研究所)

「ロールモデル(見本)となる人物を持て」とは、よく言われることです。確かに、何か問題が起きたときや迷いが生じた際に、「かつての上司の○○さんだったら、こういうときにはこうしていたはずだ」という指針があれば、どれだけ心強いことでしょうか。

身近な人ではなく「憧れの人」をロールモデルに持つことで、より短時間でそこに近づくことができるという効果も期待できます。渋谷のライブハウス「La.mama」で聴いたスピッツを敬愛し、自らもスターダムにのし上がったミスチルのようなものです(ちょっと古い例ですが、40代ならわかってもらえるのでは……)。

ただし、今の時代、「働き方改革」や「コロナ禍によるテレワーク」など、新しい働き方が求められることもあり、従来のロールモデルが通用しなくなっている面もあります。

「パワハラ防止法」も施行された今、かつての上司の指導法をそのまま真似したらパワハラになってしまう、という恐れもあります。昭和の名経営者の自伝や、その部下だった人の体験記を読むと「1日中怒鳴りつけられていた」「殴られた」などという話が頻発しますが、さすがに今では許されないでしょう。

「嫌なやつ」「ダメなやつ」の存在が実は役に立つ

そこで私がお勧めしたいのが、「こういう人にはなりたくない」という「アンチモデル」を持つことです。これは、特に40代の人にこそ意識してほしいことです。

40代の管理職ともなれば、長所を伸ばすだけでなく、短所をなくすことも求められます。多くの部下から見られる立場だからこそ、「人の振り見て我が振り直せ」ではありませんが、アンチモデルが反面教師として役立つのです。

例えば、あなたの周りには「決められない」「自分の頭で考えない」といった優柔不断な人物や、「気分でモノを言う」「都合の悪いことを言われるとムキになって反論してくる」「すぐにふてくされる」ような不安定な人物、「責任を取らない」「二階に上げてハシゴを外す」「手柄を独り占めする」といった無責任な人物がいませんか。

そういった人物を見て「嫌だな」と思うだけでなく、アンチモデルとして「自分もそうなっていないだろうか」と見直す機会にするのです。

こうした「嫌な人」と接すると、こちらも嫌な気分になるものです。しかし、嫌いな人物をアンチモデルとして「学びの対象」とすることで、その人と接する苦痛が緩和されるのです。これがアンチモデルのもう一つの効能です。

「アンチモデルになるような典型的なダメ人間は、私の身の周りに存在していない」というのなら、複数の人物からそうした断片的な問題点を集めてアンチモデルとするのもいいでしょう。どんなに立派な人でも、「ここを直せばいいのに」という箇所があるはずですから。