【8】「『裸足のアフリカ人』に靴を売れるか」“低感度”営業マン


トステム住宅研究所 購買部 課長補佐●竹腰正人

では、どうすれば相手起点で発想し、顧客目線でニーズを見つけられるのだろうか。アイフルホームの竹腰氏はいう。

「答えは誰も教えてくれません。われわれもわかっていない。でもヒントは示している。そのヒントをもとに何がベストか、仮説を立てて提案してほしいのです」竹腰氏は以前、親会社のトステムで営業経験がある。あるとき、建材の営業先で「倉庫に空きがない」と断られた。「ならば空きがあればいいのか」と考え、片付けてスペースをつくり、納品した。

「裸足のアフリカ人に靴を売る逸話をご存じですか。一人の営業マンは、みんな靴を履く習慣がないから売れないと考えた。もう一人は、みんな裸足だからいくらでも売れると考えた。同じ情報をチャンスのヒントにできるかどうかです」

【9】「『10』を聞いても『1』しかわからない」
“視野狭窄”の営業マン


日本ヒューレット・パッカード アウトソーシング購買部 企画担当マネージャー●赤岸和郎

バイヤーの話はヒントの宝庫。「メモのとり方一つにしても、これはというところでペンが動く人と、“ここをメモらないでどうするの”という人もいる」(竹腰氏)という。聴き取り力の差はなぜ生まれるのか。日本HPの赤岸氏が話す。

「10を伝えても1しか伝わらない営業が現実にいます。自分が売ることしか視野になく、いくら売り上げがあがるか、そこに頭が張りついてしまい、ほかのことは見えなくなってしまうのです。

一方、1を伝えて10わかる営業は日ごろからアンテナを高くもち、われわれの会社の考え方や現状、自身の会社の状況も把握して、全神経をとがらせて業務にあたっています。結果的に売り上げが長期的についてくる。自分の売り上げにつながることしか考えず、性急に結果を求める人は全体のパイが見えなくなり、自分がとれるところも失うでしょう」

1を聞いて10を推し量る。自動車メーカーA社の購買担当は「営業マンは福の神をもたらす人間であれ」とこう話す。

「先方の購買は何を訴えているのか。その言葉を全身で受け止め、なかに潜むものを感じ取れれば、価格交渉であっても、“あと1円足してくれたら、こんなふうによくなりますよ”と相手の琴線に触れる逆提案ができる。それが付加価値です」