休戦中の韓国にも「愛する同胞」「温かい気持ち」と呼びかけ
演説では、「休戦中」の韓国にこんなメッセージも送った。
「愛する南の同胞にも温かい気持ちを伝えたい。1日も早く新型コロナによる健康の危機が克服されることを強く願う」
なんと「愛する同胞」「温かい気持ち」である。とても金正恩氏のものとは思えない言葉だ。
軍事パレードでの演説で見られた異例の言動。ここで気になるのが、一時流れた「金正恩委員長の重体説」である。6月20日の記事「“北朝鮮の姫”金与正が『南北融和の象徴』をわざわざ爆破した本当の理由」でも指摘したように、金正恩氏が大きな手術で九死に一生を得たと仮定すれば、後遺症は出る。
後遺症は肉体だけではなく、精神的にも強く影響する。つまり金正恩氏が後遺症からストレスを受け、その結果として気弱になっているとも考えられるのだ。
実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を自分の後継者として権力の一部を譲渡し、北朝鮮でナンバー2の地位に就かせたことも、それなら納得できる。金正恩氏も金与正氏も北朝鮮の体制を築いた金日成主席の孫であり、白頭山の血統に当たる。
核・ミサイル開発の中止なくして経済制裁解除はない
拉致問題の追及で先陣を切り、その後も核・ミサイル開発を継続する北朝鮮を厳しく批判してきた産経新聞は、金正恩氏の豹変について10月13日の社説でこう書いている。
「金正恩同党委員長は演説で、経済制裁や新型コロナウイルス、自然災害による困難に直面していることについて『面目ない』と語り、北朝鮮国民や朝鮮人民軍に繰り返し感謝を表明した。名指ししての米国批判をしなかった」
そのうえで、「演説では強がりの姿勢がなかったともいえるが、それで日本が油断することは禁物だ」と主張する。見出しは「北の軍事パレード 日本への脅威を直視せよ」である。
沙鴎一歩は今回の産経社説の主張に賛成である。油断すれば、北朝鮮の思うつぼだ。核・ミサイル開発の中止なくして経済制裁解除はない。