徴兵制兵力不足で「女軍」増強へ

ただ未婚率の上昇幅は、韓国の方が大きい。さらに、2045年になると、日本の50歳時未婚率は鈍化するが、韓国は上昇し続けると予想されている。未婚・非婚の増加の背景には、就職難や教育費などによる経済的問題に加え、若い世代の結婚観が著しく変化したことがある。こうした状況がこの先も大きく変わることはないだろうという悲観的観測が、韓国の未来予測から見てとれる。

春木育美『韓国社会の現在 超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(中公新書)

2045年の韓国では、男性の3人にひとり、女性の4人にひとりは配偶者も子どももいない。親が亡くなれば、身近な直系家族は誰もいなくなる。中高年の単身世帯比率の高まりはいまだかつてないことだけに、社会に与える影響は大きい。家族形成をしないまま単身で高齢期を迎えれば、家族による介護を受けることは困難になる。孤独死も増えていく恐れがある。

徴兵制を布く韓国では、兵力不足にも頭を悩ませることになる。兵役により軍隊で任務に就く年齢のピークは、満19〜21歳である。2018年時点で19〜21歳の男性人口は97万人だが、2040年には46万人に半減する。同期間に入営者数は22万人から9万人に減少すると予測されており、2040年には、2018年の4割しか兵員を満たせなくなる。

国防省は2025年から兵力が不足するとして、現在兵力が約1万人の志願制である「女軍」の兵員をさらに増やす計画にある。多方面で人口減少の影響は避けられない。

「将来展望を欠く指導者」という問題

近年、血液不足が原因で手術が延期になる事態が起きている。韓国では献血者は10〜20代の若者が7割を占めている。10〜20代の人口が2019年時点の1190万人から、30年に880万人と26%も減ると予測されるなか、26年からは輸血用の血液不足が深刻化すると危惧されている。

ただ、韓国では人口減少にともなう社会全体の危機感が薄い。対応策として、北朝鮮の人びとを活用すればいいという楽観的な見解も根強い。北朝鮮の生産年齢人口の減少幅は、韓国よりも緩やかであるからだ。

現実味に乏しいものの、南北統一がなされれば人口規模自体は増える。このままでいけば2067年には韓国の人口は3900万人となり、人口規模では世界71位まで下がる。北朝鮮と統一すれば人口は6500万人に膨れ上がり36位まで浮上できるという(韓国統計庁『世界と韓国の人口現況および展望』2019年)。

そうなれば少子高齢化問題は緩和され、生産年齢人口も増え、内需市場も拡大するという、統一にともなう膨大なコストを度外視した発想は珍しくない。「統一で、韓国経済は大きく飛躍(朴槿惠前大統領)」、「統一さえすれば、韓国経済にはバラ色の未来が到来(文在寅大統領)」といった将来展望を描く指導者の存在が、人口減少への危機感の乏しさにつながっている。

だが、そうした楽観論も人口動態に一定の裏付けがあればの話である。北朝鮮の2018年時点の出生率は韓国同様に少子化が進んでいるのが実態だからだ(『聯合ニュース』2018年6月30日)。

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