就労時間の「20%」は自由な研究ができるルール
各社員が試行錯誤する過程で生まれるプロジェクトもある。PFNでは、就労時間の20%までは自由な研究ができる「20%ルール」を設定している。
「20%ルール」の内容については会社に将来何らかの貢献をもたらすという制限つきだが、現在のプロジェクトとは別に自由に使える時間を確保するように努めている。そこから面白いことが出てくることもあるからだ。経営陣は、そうした成果を見つけて、ちゃんと育てるということも大切な仕事の一つである。
2017年1月に公開した線画自動着色サービス「Petalica Paint(当時PaintsChainer)」は、ロボットエンジニアとして入社した米辻泰山が、深層学習の自習のために「20%ルール」を使って取り組んだプロジェクトだった。
公開以来、日本だけでなくアジアを中心に多くのユーザーに利用されており、ピクシブとの協業にも繫がっている。また、こうしたアニメ技術への取り組みは、優秀なエンジニアを集める武器にもなっている。
思いもかけない成果を見つけて育てるために
2018年7月から「PFN Day」という全社イベントも行っている。各プロジェクトや個人による研究成果発表会だ。口頭発表やポスターセッションが行われて、互いにどういうことを研究しているのか、どういう協力ができそうか、直接、情報共有できる機会だ。
社内のコミュニケーションツールは主にチャットツールの「Slack」を使っている。基本は完全にオープンで、プロジェクトに無関係な人でも、自分が興味のあるテーマや協力できそうなテーマだと思ったらすぐに会話に加わることができる。
我々の会社の規模でも、人が増えるに従って徐々に意思疎通が難しくなりつつある。小規模だったときにはなかった問題も、いくつか出てきている。そのためにもこの行動規範「Motivation-Driven(熱意を元に)」を作った。
一番の課題は、情報交換だ。意思決定は基本的には自主的に各個人やチームが決定していくことが望ましい。だがそれだと局所最適解に陥ったり、チーム間で連携がとれなかったりする。そこを解決するための組織の仕組み作りについては、既存の仕組みを参考にしつつも、自分たちなりの新しい仕組みを作っていきたいと考え試行錯誤している。