子どもの「手元」を見るカメラを設置した
長年、中学受験の指導をしてきて感じることは、中学受験を目指す小学生の指導をするときは、単元そのものを教えることよりも、つまずきに気づいてあげることが大事だということだ。だから、私は対面授業の際に必ず子どもの手元を注視する。そこからいろいろなことが見えてくるからだ。オンライン授業でもそれは必ず気をつけている。
私のオンライン授業では、PCのカメラに加えて、子どもの手元を映す「書画カメラ」を設置してもらっている。
例えば算数の問題を解くときに、何から書き始めるかをチェックする。公式に数字だけを当てはめていないか、ちゃんと理解をした上で解いているのか、自信を持って書いているのか、やや迷いがあるのか、そうしたことを子どもの鉛筆の動きから感じ取る。ちょっと怪しいなと思ったときは、「なぜこの式なの?」「どうしてそう思ったの?」と質問してみる。そういうときは、大抵うまく説明ができない。きちんと理解できていない証拠だ。
また、字の乱れや筆圧の薄さは子どもの心を映し出す。字が雑になっているのは焦り、筆圧が弱いのは自信のなさの表れだ。実は問題が解けたかどうかよりも、こうしたメンタルに気づけるかどうかが重要なのだ。
だから、ホワイトボード機能だけを使って、授業をした気分になっている家庭教師はおすすめできない。
良い家庭教師は子どもの「表情」を見ている
もう一つ大事なのは、子どもの表情だ。1対1のオンライン授業は、子どもの逃げ場がない。そのため勉強に集中できると思い込んでいる親がいるが、それは大間違いだ。小学生の子どもの集中力なんて、30分持つかどうか。聞いているように見えて、まったく聞いていないなんてこともある。
そこで私は「今の問題の解き方、もう1回説明してみて」と、ときどきあえて子どもに説明させる。また、対面授業での休憩の代わりに、画面越しでストレッチをして、リフレッシュする時間を設けている。
ただ、そんなやり方をしなくても、子どもの集中力を維持することはできる。授業がおもしろければいいのだ。対面授業が下手な教師は、いくらPCをうまく扱えたところで、結局のところ授業が下手。ここでいう“下手”とは、子どもの表情を無視して、見事な説明・解説をしてしまう教師を指す。自分は完璧に教えたつもりかもしれないが、目の前の相手が理解できていなければ意味がない。