コロナ感染者数・死亡者数は世界の中でも最低なのに「評価」も最低

図表1(右側)には、また、ピューリサーチセンターが6月から8月にかけて各国で行ったコロナ対策に対する国民の評価についての意識調査結果を掲げた。

これを見ると、否定的評価が肯定的評価を上回ったのは、英国と米国だけであり、その他の諸国では、肯定的評価が否定的評価を上回っていた。スウェーデン、イタリア以下8カ国では感染の深刻さにもかかわらず7割以上の国民が肯定的評価を下している。

いろんなドタバタがあっても国はよくやっていると考えているのである。この結果を報じたピューリサーチセンターの報告書の表題が「先進14カ国ではほとんどの場合、新型コロナに対する国家的対応を承認する結果」となっていることもうなずけるのである。

また、もう1つ気がつくのは、感染者数や感染死亡者数が多い国ほど、おおむね国民評価は低いという点である。感染者数が1位の米国と感染死亡者数が2位の英国では否定的評価が多いのに対して、欧米の中で感染者数、死亡者数が少なかったデンマークやオーストラリアでは95%前後の国民が国はよくやっていると評価している。

ところが、例外となっているのは日本である。

感染者数や感染死亡者数は最低レベルであるのにもかかわらず、肯定的評価は55%と少なく、否定的評価がフランスや感染死亡者数1位のベルギーを上回ってさえいるのである。

感染や人的な感染被害についての結果を出しているのに、国民の評価はずば抜けて低いのが印象的である。災害など不可抗力に起因する国家的危機に対しては、国民が一致団結し国への評価も高くなる傾向があるというのに、日本はそうなっていないのである。

「だから評価が低い」安倍政権のコロナ対策

欧米のようなロックダウン(都市封鎖)などによる強制的な措置を取らずに、あくまでも自粛レベルにとどまった日本の新型コロナウイルス対策について、それにもかかわらず日本の感染者数や感染死亡者数が世界の中でも最低レベルである点を、当初、安倍政権は日本のコロナ対策の勝利と自賛していた。

写真=代表撮影/ロイター/アフロ
2020年8月28日、首相官邸で行われた安倍内閣総理大臣記者会見

しかし、欧米諸国と比較して、日本ばかりでなく中国や韓国も人口当たりでの感染状況が低く、政策の妥当性が感染状況の違いを生んでいるかどうかは怪しいと大方が見なすようになった。

さらに、ノーベル賞受賞者として国民の尊敬を集めている京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏が、感染状況の軽微さには何か日本特有の理由があるのではないかと、自身が開設しているコロナの情報サイトでこれを「ファクターX」と名付けるに及んで、ますます、対策の効果だと手放しで主張するわけにはいかなくなった。

一方、安倍政権のコロナ対策については以下の点で批判が根強い。

●首相判断による全国全校休校要請など実際の効果というより受けを狙ったとも見える専横措置が目につく。

●アベノマスクとのちに揶揄されることになる全戸2枚の布マスク配布計画のように実施が大きく遅れ、配布の意義が霧消した事例、あるいはGoToトラベル・キャンペーンの実施(7月22日~)を「第2波」と見られる感染拡大期が到来したのにむしろ早めて実施した事例など、時宜にかなった対策とは言いがたいチグハグな政策運営に陥る例が散見される。