▼テレワーク中にかかった経費を会社に最大限請求するには?

経費を請求する前に、自分の立ち位置確認

テレワーク導入に伴い、オフィスのテナント契約を解約、縮小する企業が増えている。企業本体にとって、コロナ禍は固定費削減の大きなきっかけとなったが、一方で働く環境整備のための負担を強いられたのが個々の社員だろう。

テレワーク普及から3カ月ほど経過したが、自宅にネット環境やデスクが整備されていないという社員は少なくない。だが、その負担を会社側が経費としてしっかり定額支給している企業は少数にとどまるのが現状だ。では、作業環境を整えるために会社に必要経費を請求する場合、実際どのような手続きで進めればよいのだろうか。

「まず、正規雇用か非正規雇用かで経費請求をしっかりできるかどうかが現実問題として大きく異なるという実情があります」(野澤氏、以下同)

これは簡単に雇用を切られる立場かどうか、つまり契約の違いにより生じるものだという。

「非正規雇用者の場合、本格的な人員削減が始まりつつある現在、経費請求につき細かく言う労働者を無理して維持するメリットは、会社側にほとんどありません」

野澤氏によると、現実的にテレワーク中の電気代などをしっかり経費請求できるのは正規雇用者のみ。転職できるスキルがあるのが前提だが、請求したければ、雇用契約を見直したほうがよいという。

「大手企業を中心としたテレワーク導入は、多かれ少なかれ過剰人材を可視化し、リストラを進める準備行為であるという裏側面があります。ここ数年のプチバブルで余剰人員を抱えてしまった企業はかなりあり、大企業の場合には法規制の問題もあり、簡単に解雇はできません。コロナ禍が数年以上続く可能性が高まった現在、今のうちから準備しておかなければ大企業でも倒産してしまいます」

今後の雇用問題は、アフターコロナにおけるアメリカをはじめとした先進国の状況を冷静に分析すれば予測しやすいという。

「日本より新型コロナの感染拡大が進み、解雇規制が厳しくないアメリカでは、少なく見積もっても失業率が10%以上の水準に達しています。コピー代や電気代を細かく請求する場合、給与・経費に見合った業務をしっかり遂行しているか自己分析する必要がありますが、自分が思っているほど(厳しい経営環境下にある)会社が評価するケースはあまりありません」

だが、何もしなければ自己負担は増えるばかりであり、何らかの対策は必要だ。

「図にも示したABC理論を実践しましょう。これは要求項目を3グループ程度に分けたうえで、重要度が高い、つまりAのグループについては確実に経費として認めてもらい、他は捨て球として利用する交渉方法です」

真っ向ストレートだけで勝負できるのは時速170キロの剛速球を投げられる超人のみ。変化球をうまく組み合わせる形でコスト回収しながらアフターコロナを生き延びよう。

野澤 隆(のざわ・たかし)
弁護士
1975年、東京都大田区生まれ。東京都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士秘書などを経て、2003年司法試験第2次試験合格。
(写真=PIXTA)
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