「障害年金は年額で58万6300円、月額にすると約4万8800円です」
長男の事情を伺った筆者は、母親に障害年金のお話をすることにしました。
障害年金でまず確認することは初診日です。初診日とは、その病気で初めて病院にかかった日のことをいいます。長男は会社員の時、つまり厚生年金に加入している時に初診日がありました。よって、障害厚生年金を請求することになります。
筆者は母親に説明をしました。
「障害厚生年金は1級から3級があります。障害の程度が軽い方から3級、2級、1級となります。日本年金機構によると、3級は『日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方』となっています」
筆者はさらに続けました。
「うつ病などの場合、3級に該当または3級より軽くて障害年金が支給されない、といったケースも多いです。もちろん、症状がかなり重ければ2級になることもあります。ですが、結局のところ『請求してみないと結果は分からない』ということになります」
「そうなんですか。もし障害年金がもらえたとすると、いくらになりそうですか?」
「仮に障害厚生年金の3級に該当したとしてみましょう。3級は年金額の最低保障があり、年額で58万6300円、月額にすると約4万8800円となっています」
それ聞いた母親は「え?」というような表情を見せました。思ったよりも金額が少ない、と思ったのかもしれません。そう感じた筆者は、さらに障害年金の請求方法について説明することにしました。
「ご長男の場合、障害認定日による請求(以下、認定日請求とする)をすることも検討できます。もし認定日請求が認められれば、今回のケースでは過去にさかのぼって年金が振り込まれることになります」
過去5年分が認められれば3級の場合、初回の振り込みは290万円
筆者は白紙の用紙に図を書き、説明をすることにしました
「例えば初診日を2012年2月20日とします。初診日から1年6カ月を過ぎた日を障害認定日と言います。図で言うと2013年8月20日になります」
「障害認定日の症状が法令に定める障害の状態にあると認められれば、つまり、認定日請求が認められれば、さかのぼって障害年金が受け取れることになります」
「そうなると約7年分の年金がさかのぼってもらえるというわけですね?」
「いいえ。残念ながらそうではありません。障害年金には5年の時効があります。つまり、さかのぼりは最大でも5年となります。時効の計算は複雑なので、ざっくりとした試算になりますが、仮に上記のケースで障害厚生年金3級が認められたとすると、初回の振り込みは約58万円×5年=290万円になります。その後は2カ月に1回約9万7700円が振り込まれます」
「初回の振込金額は大きいですね。まとまったお金が入ってくるのはすごく助かります」
「ご長男の場合、すでに時効が発生していますので、できるだけ早く書類をそろえて年金事務所へ請求するようにしてください。つまり、請求は早ければ早いほうがよい、ということです」
それを聞いた母親は不安を口にしました。
「障害年金の書類をそろえるのは大変でしょうか? 私たちでもできますか?」
「そうですね。時間と手間をかければできると思います。ただし、別のご家族の中には、書類をそろえるのに時間がかかり請求まで数カ月かかってしまった、というケースもあると聞いたことがあります。なので、手間ひまや効率を考えたら、専門家に依頼してしまう、という方法もあります。もしよろしかったら私が代わりに全部やることもできます。ご検討ください」
「わかりました。障害年金については長男にも話してみます。また私のほうからご連絡します」
母親と筆者はそのようなやり取りをし、その日の面談は終了となりました。