WTO提訴は明らかに無理筋

誰かの政治的意図があったのか、それが達成されたのか否かは明確ではないが、現時点で確かなのは、日本企業の高純度フッ化水素のシェアが低下したことと、韓国の半導体産業に対する大きな打撃にはなっていないこと、韓国の脱日本依存に、まだ完全ではないにせよ加速をつけさせることになった、ということだ。

昨年9月、韓国はこの「見直し」を不当だとして世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄とリンクさせたことで米国の逆鱗げきりんに触れ、いったん提訴を取りやめていたが、今年6月にその手続きを再開した。しかもそのWTO議長に韓国人の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長が立候補するという念の入れようだ。が、「輸出規制」が誤解であることはすでに明白であり、提訴は明らかに無理筋であろう。

直接交渉のみならず報道も介した国家間のコミュニケーションに、誤解やミスリードはつきものだが、混乱をきたした渦中で正確な情報を見分け、発信するのは難しい。ある程度収まった時点で振り返ることは、ただでさえ拗らせ続けている両国の先々の関係を考えるうえでも必要な事であろう。もっとも、付き合う際は考えられぬようなリスクを覚悟すべき国だということを、何度も確認しているだけなのかもしれないが。

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