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図表1

企業の選択肢は2つある。1つは、すでに高給を取っている層に、なるべく早く辞めてもらうことである。図表1をご覧いただきたい。これは、2000年以降の、主な上場企業の希望・早期退職者の募集状況をまとめたものである。02年以降、景気が一時的に回復した06年まで、希望・早期退職者の募集は減少傾向にあったが、07年以降再び増加に転じていることがわかる。

「今年はそうでもないじゃないか……」と思われる読者がいるかもしれないが、今年の数字は5月11日時点のもの。単純計算で3倍すると、希望退職・早期退職の実施企業は、年末までに360社を突破する勢いだ。それが現実になれば、言うまでもなく過去最高の数字になる。多くの企業が、「高給取りよ、一刻も早く職場を去れ」と叫んでいるのだ。

むろん、希望・早期退職者の募集は、強制的なものではない。景気の低迷が長引けば、今年の秋ごろから正規社員のレイオフが始まると予測する論者もいるが、私はそこまでは考えていない。先ほど述べた通り、日本企業はロスジェネ世代を中心とした非正規雇用者を大量に創出することによって、労働力を容易に調整できる環境をつくり上げてきたのだ。初期段階で解雇されるのは、やはり非正規雇用者だろう。

では、正規雇用者が絶対安泰かといえば、そうではない。バブル崩壊後の雇用状況を思い出してほしい。多くの企業で横行していたのが、早期退職を促す“いびり出し”であった。

私の知る限りでも、研究や開発といった技術職の人がいきなり販売子会社に販売出向に出されたり、はなはだしい場合は生産応援という名目で、生産ラインで働くといった事例が多々あった。景気の低迷が長引き、新商品の開発を行う余力が企業になくなれば、技術職は無用の長物である。企業は彼らを居場所のない職場に異動させることで、あくまでも“自主的に”早期退職を希望するよう仕向けたのである。

こうした陰湿な肩叩きが、バブル崩壊後のわが国では日常の風景であった。そして、こうした悪夢が、景気の動向いかんによっては、年内にも再現されないとは限らないのである。

現在の高給取りに残された道は3つ。必死の努力によって役員まで駆け上がるか、割増退職金を貰ってさっさと会社を辞めるか、陰湿ないじめに遭いながらも会社にしがみつくかである。いずれにせよ楽な道は残されていない。