未曾有の経済危機は年収1000万円以上の高所得者層をも直撃した。1万件の家計診断を行う筆者が、今後の生活の未来を見通す――。

所得の高い人々にとっては、これからの時代いいことはない。

むろん、高額所得者といっても幅があるが、ここでは年収1000万円を一つの境界と考えることにしよう。年収1000万円を超えるクラスに、当面、いい話はありそうにない。いくつかの理由を挙げながら、論証していきたい。

まず、給与である。すでに1000万円前後の給与をもらっている人は、これから給与が上昇する可能性はどんどん低くなっている。経営者であれば話は別だが、一般の会社員であれば、現状から大きく給与がアップする可能性は極めて少ないのである。

「ロスジェネ世代」と呼ばれる人々が存在する。定義はさまざまだが、36歳以下の世代を指してこう呼ぶのが一般的だ。就職氷河期以降に大学を卒業したこの世代がすでに職場の半数近くを占める年齢に達したわけだが、この世代の給与は、ロスジェネ以前の世代に比べて非常に低い水準に抑えられている。

中国をはじめとする新興国との競争が本格化した時期に彼らは就職をしている。企業は新興国との競争に勝つため、人件費の抑制に必死だ。給与は一度上げてしまうと下げるのが難しい。そこで多くの企業は、ロスジェネ世代の給与を低い水準に抑え続けると同時に、非正規雇用の幅を拡大して、労働力の調整が容易にできる体制をつくり上げた。

つまり現在の職場には、ロスジェネ以下の世代と、それより上の、旧来の年功序列型賃金を適用されている世代の2種類の社員が存在するのである。いわば、給与体系がダブルスタンダードになっている状況が存在するのだ。

こうした状況は、当然、ロスジェネ世代の中に不満を引き起こす。なぜ俺たちだけ給与が安いのか? こうした疑問が彼らの意識にはびこると、職場のモラールが低下してしまう。これは、企業にとって決して好ましいことではない。

では、どうするか。