研修の“影響”で部下だけでなく上司の意識も変わる

「言うからには女性もやらなくてはいけない」
ヤンセンファーマ営業本部 田中 忍さん
1979年生まれ。女性MRの会「なでしこ」のエリアリーダー。女性社員から相談を受けることも。

ヤンセンファーマには女性MRで組織する「なでしこ」という会がある。女性の離職率の高さを問題視し、女性MRの育成・相談機能として2005年に立ち上げた。全国の拠点に「なでしこ」のエリアリーダーを置いているが、田中さんもそのリーダーの1人だ。なでしこの会や今回のセミナーを通じて感じたことは「覚悟を決めて働く」ことだ。

「女性だからどうのと会社に求める前に、まず自分が必要とされる価値ある存在に変わること。『女性だから』ではなくて社会人として、営業職としてやるべきことをやったら男女は関係なくなるはずです。それでも理解してくれない上司であれば、上司を変えるような活動をJ&J全体でやっていきますが、何より重要なのは自身が必要とされる人になろうと覚悟を決めて働くことだと思います」

MRやメディカル営業職は自宅を起点に、担当するエリアを車を使って営業する仕事であり、直行直帰も珍しくない。周囲とのコミュニケーションが少なく、飲みニケーションも少ない。とくにインフォーマル情報は男性同士でやりとりされ、なかなか女性に下りてこない。いわば孤独な仕事だけに今回のグループ合同セミナーは大いに刺激を与えたようだ。参加者の声にも如実に表れている。

〈結婚・出産後も営業でがんばっている人がいることを知り、自分自身の選択肢も広がるのを感じた〉

〈出産がキャリアの時間軸の終わりではないことを感じた。制度は本当に充実した会社にいると実感するが、運用するのは本人の意思はもちろん、周囲の理解を得る努力も必要〉

緊張感溢れる“本音トーク”は管理職にも影響を与えずにはおかない。ある男性管理職は当初仕事を続けたいという女性営業は少数派だと思っていた。しかし、その先入観は完全に覆されたと語る。


グループ各社の社長が直々に「希望・前進」の花ことばをもつガーベラの花をプレゼントする。

「正直言って女性の仕事に対する意識は想像以上でした。実際に育児をしている女性営業は実績を確実に残すなど覚悟を持って仕事をしており、ややがんばりすぎている現実もわかりました。優秀な人材の確保という意味でも、働き続けることができるサポート体制をより万全にすべきだと思いました」

セミナーを通じて、女性は男性に比べて曖昧なことを嫌う傾向があることを改めて感じたというこの管理職は現在、論理的でクリアな説明を心がけるとともに、コミュニケーションを増やすべく日々実践しているという。

セミナーは女性営業職と男性管理職が本音で語り合うことで「女性の中にどういうニーズが隠れているかを見出し、仕事への意欲を自然発生的にエンカレッジすることが目的。制度をつくるのではなくて、女性が活躍できる空気やトーンをつくる」(古川マネジャー)ことを狙ったものだ。座学形式のセミナー以上の効果は十分にあったといえるだろう。

(小川 聡=撮影 ジョンソン・エンド・ジョンソン=写真提供)