管理職と女性営業職の“本音トーク”を炸裂させる仕組み

管理職希望者は多くても実態として少ないのはなぜか。管理職との意識のズレはどうして起こるのか。講演に続いてテーブルごとに実施されたワークショップでは管理職と女性営業職を交え“本音トーク”が炸裂した。もちろん同じテーブルで直属の上司と一緒になることがないように意図的に席を配置してある。

グループごとに「育児休業後のカムバック」「セクハラ警戒のコミュニケーション格差」「営業現場の体力格差」の3つのテーマから選択して議論する。いざ議論が始まると「いっせいにワーッという感じで活発に議論していた。上司と部下の利害関係がないので言いたい放題。テーマを離れていろんな議論が飛び交う」(古川マネジャー)場面も見られた。

あるテーブルでは育児と仕事の両立が議論のテーマになった。ある女性は「女性に対しては様々なセミナーがあり、女性の意識向上には役立っているが、男性に対してはあまりない。男性側の意識改善のために男性向けセミナーがあってもよい」と提言。さらにそれに呼応するように「ダンナに対するトレーニングも必要だ」という発言もあるなど活発な意見が相次ぎ、大いに盛り上がった。

セミナーの白眉はワークショップ後に実施された発表タイムだ。各グループから1人ないし2~3人が壇上に立って発表するものだが、とりわけ会場を沸かせたのは、管理職になりたくない女性営業職が56%もいたことを踏まえての女性の発言だった。

「女性が管理職になりたくないのはどうしてか、と上司のかたは思っているかもしれませんが、それはあなたがたが魅力的ではないからです。仕事が忙しすぎて疲弊してしまい、管理職になるとああなってしまうのかと。私たちが今後結婚し、子供を持つということに比べると、ああいう管理職になる道を選びたくないと思ってしまうのです」

痛烈な指摘は男性管理職にも少なからずショックを与えたようだ。終了後の男性管理職の感想である。

〈正直、その通りだと反省しました。女性営業職に一番近い位置にある直属上司の私の仕事ぶりが、彼女たちの「管理職になりたい」という気持ちを高揚させるということが認識できた。明日から改めてがんばりたいと思いました〉

こうした反響について、このセミナーに参加したヤンセンファーマ営業本部統括管理部営業企画グループの田中忍さんはこう語る。 

 「男性管理職も、自分の部下に直接言われたらすごいショックでしょうが、マイクを通じて女性の声を代表して言われたことで、気づいてもらえたことがお互いによかったと思います。自分の家庭も円満かつ仕事も生き生きと楽しくすることが大事だと管理職の人に思えてもらえたことが、私にとっても今回の一番の大きな前進になりました。日頃、上司に対してもっと輝いてくださいとか言えませんしね」