韓国に対するトランプの本音

筆者は上記のような米国の対韓アプローチは、米国が韓国への対応に限界を感じていることに起因していると考えている。つまり、米国の本音は韓国に対する融和的な態度とは真逆のものではないかと推測する。

米国は対中国の観点から中長期的に大幅な軍事シフトを行うことを余儀なくされている。特に在外米軍の維持費を削って、効率的で有効性の高い軍事力を形成することが求められている。さらに、中国との戦略正面は朝鮮半島ではなく、南シナ海を含めた海洋方面に移っており、むしろ日本、台湾、グアム、東南アジア諸国、インドなどとの連携を深める重要性が増している。

そのうえ、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩と会談したことで、朝鮮半島情勢は小康状態を保っており、第2次朝鮮戦争Xデーのような妄想は論外としても、一時期のような偶発的な軍事衝突が喧伝されるような状態ではなくなっている。仮に11月大統領選挙の結果として、ジョー・バイデン大統領および民主党連邦議会の政権が誕生した場合、彼らは軍事費を抑制する方向に舵を切ることは明白であり、米軍が東アジアに戦略正面をシフトする方向は変わらないだろうが、それが在韓米軍維持という結論になるかは疑問だ。

もちろん米国は韓国との関係をわざわざ壊す必要もないし、できれば海洋方面での外交・安全保障関係を強化したいと願っていることは間違いない。ただし、それは韓国との強力な同盟関係を維持し、在韓米軍の規模を将来にわたって維持することと同義ではない。

安く済むからG7に韓国を呼んだ

トランプ大統領が在韓米軍撤退に度々言及していると報道されているが、それはトランプ大統領の意向というだけでなく米国の本音の部分が漏れていると捉えるべきだろう。

つまり、最近の米国の韓国に対する秋波は、在韓米軍を将来的に同規模で維持することが困難であることを見越し、在韓米軍の規模を徐々に縮小したとしても、米国は韓国を見捨てるわけではないという外交的なメッセージを送っているにすぎないものと思う。

冒頭のG7招待の文脈で見ても、ロシア、インド、オーストラリアと韓国では戦略的な重要性は全く異なるものと思ってよい。核武装国の北朝鮮が米中露のバランスを取りながら実質的な緩衝地として存在している以上、韓国が上記の3カ国と同等の対中戦略上の重要な地位を占めているわけではない。

米国は露印豪については「戦略上必要だから招いている」が、韓国については「安く済ませるために招いている」のだ。日本は積極的に賛成しないだろうが、露骨に反対もしないだろうから米国が支払う外交コストも安いと見ているのだろう。