トラックの死角「左後方」に居座る自転車

<理由①見えない>

トラックは、左後方に多くの死角を作る。というのも、乗用車のような後部座席がなく窓も付いていないため、振り向いた先に見えるのはただの壁なのだ。

写真撮影=筆者、撮影協力=浦島サービス株式会社
トラックの運転席からは左後方を直接見ることができない。

しかし、よりによって左後方は自転車の「定位置」。そこからしばらくじっと機を伺い、トラックの隙を見つけるや否や、彼らはその真横をすり抜けようとするのだ。そのため、さっきまで後ろにいた自転車が、ふと気が付くと知らぬ間に目の前にいるという怪現象がしょっちゅう起きる。

こうした死角をなくすべく、トラックには大小様々なサイドミラーが付いているのだが、皮肉なことにそれらはできるだけ広い範囲を映し出そうと曲面になっているため、対象物を捉えたとしてもすべてを豆粒ほどの大きさにしか映さず、距離感が非常に掴みにくい。そこに雨なんか降ってミラーが濡れれば、対象物はより一層見えづらくなる。

写真撮影=筆者、撮影協力=浦島サービス株式会社
トラック運転席から見た左後方の見え方。自転車があるが、停止したトラックからでも見えない。

そのため、最近のトラックには最終兵器として後部を映すバックカメラが常時稼働しているのだが、やはりこのカメラも「左後方」にはめっきり弱く、すべての死角が解消されるまでには至っていない。

無防備なのにハートが強すぎる……

<理由②被害が大きくなりやすい>

車道を走れる自転車は、つまるところ時速60kmものスピードで走る自動車たちと並走することになるわけなのだが、そんなサイクリストを見てみると、彼らの格好は先述通り驚くほど無防備である。

いわゆる「ママチャリ」と呼ばれる自転車に乗っているサイクリストでヘルメットをかぶっている人を、筆者は今までほとんど見たことがない。車道を走る車両の中で、外身は弱いがハートが強いのが彼らサイクリストなのだ。

対照的に、外身は強いのに彼らの存在によって神経をすり減らすのがトラックだ。トラックは車高が高いため、たとえ自転車が真正面からぶつかってきても、ドライバーが怪我をすることがほとんどない。

そんな真逆のパワーバランスから、たとえトラックに過失がなくとも事故を起こしてサイクリストが怪我を追ったり死亡したりすれば、トラックドライバーが逮捕されてしまうという理不尽が起きる。

実際過去には、高速道路を走っていたロードバイクをはねたトラックドライバーが逮捕されるという事例もある。ただまっすぐ前を走っていただけのトラックにとっては、とんだ「とばっちり」だ。

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<理由③交通ルールや危険現象を分かっていない>

先述通り、自転車は「軽車両」に属するため、他車両と同じように道路交通法を守らねばならない。つまり、「自転車を除く」などの補助標識がない限り、自転車も一時停止や進入禁止、一方通行などの標識に従わなければならないのだ。