コロナ禍で人手不足に拍車がかかるトラック業界で、他業種からの転職希望者が増えている。元トラックドライバーの橋本愛喜さんは「『底辺職』とされていた仕事に注目が集まっているのは歓迎だが、現場のトラックドライバーたちが手放しでは喜べない事情がある」という——。
倉庫の入り口で積み込みを待つ荷
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「もう勘弁してくれ」盆暮れ並みの物量に疲弊する現場

デマによる買いだめや買い占め、さらには外出自粛要請や休校・休業要請、緊急事態宣言で人々が巣ごもりするようになり、物流の混乱は急激かつ深刻さを増している。

一般社団法人全国スーパーマーケット協会が発表した2020年3月期の販売統計調査(速報値)によると、スーパーマーケットの総売上高は前年同月比の8.8%増。日々スーパーに生活必需品を降ろすトラックドライバーたちからは、

「スーパーの配送トラック運転手は疲弊している。もう勘弁してくれ。毎日毎日盆暮れ並みの物量」「最近の物量の多さと連続する雨のせいでもういっそコロナになって休んだほうが楽なんじゃないかと思うようになってきた」

といった悲痛な声が聞こえてくる。

宅配を担う配達員の疲弊もすさまじい。

「外出自粛要請で逼迫ひっぱくしていたが、そこにやってきたゴールデンウイークで物量に殺された」
「どうせ巣ごもりで家にいるんだから、時間帯指定するの本当にやめてほしい」

筆者の自宅に配達にやって来る大手運送会社の配達員は、「荷物量は普段の2倍」と話していた。もっと何か言いたげな表情だったが、その気持ちとは裏腹に、体はすでに次の配達先へ向いていた。