実際、今年5月には「時間短縮のために首都高速を走った」という理由から首都高を走るウーバーイーツの配達員がいた。また今年7月にはスマホを見ながら車道の右車線を走り、タクシーと接触事故を起こした配達員の映像が大きな話題になった。
トラックドライバーもあきれる「自由すぎる自転車」
今回、こうしたサイクリストのマナーやルール違反に対して、現役のトラックドライバーはどう思っているのか意見を聞いたところ、以下のような声が聞こえてきた。
○スマホや両耳イヤホンでの“ながら運転”の自転車は相変わらず多い(50代男性中型トラックドライバー)
○自転車乗りさんの後方ノールックでの歩道からの車道への急な進路変更はホント勘弁して欲しいですね(40代男性大型トラックドライバー)
○自転車の逆走と突然の車道への飛び出しは、車体の大きいトラックにとってはどうすることもできない(50代長距離ドライバー)
○一番怖いのは自動車の左折レーンを直進しようとするサイクリスト(30代地場ドライバー)
また、昨今トラックドライバーからその存在を頻繁に指摘されるようになったのが、トラックの「左後方」ではなく、「真後ろ」につくサイクリストだ。
箱型のトラック(箱車)の後ろには、空気抵抗を受けない「スリップストリーム」と呼ばれるスポットができやすく、そこに入ると消費エネルギーを抑えたまま速いスピードで走れるということから、トラックの後部にピタッとくっついた状態で走ろうとするサイクリストが最近増えてきているという。
真後ろからトラックを煽る自転車
が、この行為は、先月改正道路交通法に新設された「あおり運転罪」が自転車にも適用されることになったため、同法の処罰対象となるのに加え、なにより非常に危険であることは言うまでもない。トラックが急ブレーキを踏めば、彼らはトラックに追突するか、後続車に轢かれるか、またはその両方に確実に巻き込まれる。
また、サイクリストだけでなく、トラック以外の道路使用者の中には、「車両に発生する危険現象を知らない人が多い」という指摘も多い。
その代表例が「リアオーバーハング」だ。
リアオーバーハングとは、後輪より後ろの車体部分のこと。車体の長いトラックが左折する際、内輪差が大きく生じることはある程度知られてきているが、実は右折時にもこのリアオーバーハング(トラックの後輪からお尻部分)が隣車線や歩道にはみ出す危険性があり、左後方を定位置にするサイクリストや歩行者が巻き込まれやすい。
自動車と自転車の「相互理解」が事故を防ぐ
このように、トラック目線でサイクリストを見ると、彼らが悪者であるように見えてしまうのだが、その一方、自転車に乗らないドライバーにはなかなか気付いてもらえないサイクリストたちの事情もある。
あまり知られていないが、日本の道路はその多くが雨水やゴミなどを効率よく道路から排除させるため「右高左低」にできている。そのため、サイクリストが走らされている車道左側には、雨水や排水溝、転がり集まったゴミ、そしてクルマの体重が左に偏ることでできる轍といった障害物が集中している。
中には、そのまま素直に追い抜かず、わざわざサイクリストに向かって幅寄せしたり、急ブレーキをかけたりして嫌がらせしてくるドライバーも少なくない。
コロナ禍によって今後ますます増えるであろう自転車と初心者サイクリスト。無意味な事故を起こさぬためには、サイクリストのマナーの向上だけでなく、ドライバーの理解や道路環境の整備も今後必要になってくるのかもしれない。