ムーブメントを起こすための3つの要素

ムーブメントは起きたあとなら誰もが理解できるけれど、起きる前はフワフワしている、だから、もしフワフワした「こうあったほうが素敵だな」と思う存在に気づいたら、その存在の本質を探り当てること。僕らの場合は、ヨーロッパ各地の田舎で暮らすつくり手の人々に出会って生活に触れ、観光地ではないその土地の奥にまで入っていくことで、「なんとなくいいな」と感じていたフワフワしたものの本質が見えてきました。

本質を探り当て、それを正しく伝えられたらムーブメントはいずれ起きます。必要なのは以下の3つの要素が揃うこと。

ひとつめは「ビジョン」。単にどこかで「流行はやっているから」ではなく、なぜそうあったほうがいいのかという理由とそれを人々に伝えるエネルギーが自分の中にあるかどうか。

ふたつめは「賛同者」。自分と同じくらいの熱量でそのビジョンを応援してくれたり、一緒に行動を起こしたりしてくれる仲間はいるか。もし仲間が集まらないなら、それは目指す方向かタイミングが、時代に合っていないということです。

最後は、「時代の流れ」を引き寄せられるかどうか。よく「時流を読む」と言いますが、時流というのは「読む」というより、ただ近くに感じて仲間を増やしていけば、自然とそれを自分のほうに引き寄せることができるというのが僕の持論です。

時代はあとから自然とついてくる

「このほうが流行る」と言っているようでは、時すでに遅し。そもそも「流行る」と感じるということは、すでにそこに潮流が見えているわけで、その潮流を導いている人が自分よりももっと前にいるということになります。

横川正紀『食卓の経営塾 DEAN & DELUCA 心に響くビジネスの育て方』(ハーパーコリンズ・ジャパン)

そうした流れに乗るのも悪いことではないけれど、自分の前にいる人がなぜその潮流をつくったのかを理解せず、ただ流れているからという理由で乗っていると、潮目が変わったときにそのまま振り落とされてしまうでしょう。

それが、よくいう「ゼロイチ」を起こせる人とそうでない人の違いではないかと思います。前者は、時流が変わると自分で勝手にかじを切って次に行くけれど、後者は舵を切るところまでは見ていないので、流れが変わった瞬間「あれ?」となってしまう。

ビジネス書ならば、「こういう戦略でエコバッグを売ったら大ヒットしました!」と言ったほうが受けるのかもしれませんが、そういったマーケティングやアナリティクスよりも、直感的に「こっちのほうがいいよね」「これって面白くない?」と感じることを掘り下げ、替同者を集って丁寧に広げていけば、時代はあとから自然とついてくる──そんな気がしています。

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