「夜の街」の住人だって満員電車に乗る

クラスター多発の歌舞伎町、とくにホストクラブはその悪目立ちと好奇の目から東京アラートのやり玉に挙げられた。もっとも、その東京アラートそのものが6月11日に解除され、19日には接待を伴う飲食店の自粛も解除された。都は特定業種を名指ししたにもかかわらず、結局のところ全面解除したことになる。パチンコに至っては結局何もなかったのに世間の非難を浴び続けた。一体何だったのか。揚げ句の果てに連日50人以上の感染者が確認されている。それどころか100名を超えている日もある。

「客だって夜の女ばかりじゃないです。普通のOLさんだっています。みんな会社行ってますよ。リモートの人なんて元々来ませんし。コロナなのになんで出社なのって愚痴ってますよ」

出社は嫌だがホストクラブには行く。本来、人間は自分の欲望に正直な生き物だ。一連のコロナ禍でそれらを嫌というほど見せつけられた。そんな彼女たちが出社する。職場クラスターも記憶に新しい。

「キャバとか風俗だってそう、普通の子の小遣い稼ぎですよ。だからそいつらも電車に乗るし、普通に生活してるし、会社に行ってるのもいる」

それはそうだろう。ガッツリ金と女の野望に染まった専業ホストを除けばバイト感覚、キャバ嬢、風俗嬢に至ってはOLやフリーターの兼業も多い。主婦や専門職、食えないフリーランス(それは役者だったり、クリエーターだったり)のシノギだったりする。そしてそんな女の子も出社する。コロナかどうかなんて、誰にもわからない。

ホストも学校に行くし、色んな県から通っている

「俺も再開したんで学校行ってます。満員電車にはサラリーマンもOLも、夜の仕事もいます。車で来てるホストは稼いでるホストだけ、みんな寮の奴以外は電車ですよ。なのに満員電車は絶対責めませんよね?」

確かに、この一連のコロナ騒動でマスコミ、とくにテレビが決して触れなかったのが満員電車だ。もちろん緊急事態宣言中の車内はガラガラだったが、都県をまたぐ移動の自粛が叫ばれる中でも首都圏の在来線はおおむね平常通り、都心および隣接県にコロナかもしれない人を運んだ。

「夜の街の人間だって東京だけじゃない。埼玉とか神奈川、千葉とかの人もいますよ、全員都心に住んでるわけじゃない。実家暮らしもいます。東京の会社だってほとんどは埼玉とか神奈川、千葉でしょ、同じじゃないですか」

「夜の街」なる感染者のみ具体性をもって発表されるが、現実には感染経路不明を含めその他「謎の感染者」も存在する。発表の仕方も含め、未知のウイルスとはいえあまりに大衆迎合ではないか。これは取材後の話だが、6月29日に埼玉県知事が「東京の飲食店の利用自粛を」と呼びかけた。埼玉のビジネスマンの大半は都心に勤務しているといっても過言ではない。国が非常事態宣言を解除したいま、そんなことを言われても経済活動のただ中にいるサラリーマンをはじめとした労働者は困るだろう。全員飲食店で罹患りかんしたわけでもあるまいし、正直よくわからないパフォーマンスだ。