(5)運動
一日5000歩早めに歩くのが理想
健康を保つのに運動は欠かせない──。誰もが信じて疑わない常識です。しかし、免疫力を高めるという点では、激しい運動は決してプラスになるとはかぎりません。
確かに激しい運動をした後、NK細胞の活性は上がります。しかし運動を終えると、急激に落ちてしまうのです(図)。「激しい運動をした人は、まったく運動しなかった人よりも上気道感染症(風邪)にかかりやすい」という調査結果も報告されています。
「肉体を酷使したスポーツ選手は寿命が短い」という説もあります。毎日のハードトレーニングを積むことで、大量の活性酸素が発生し、細胞が酸化。さらにプロスポーツ選手は強いストレスにさらされるため、免疫力が落ちやすくなる、とも考えられます。
コロナ禍で体を鍛える場所を失い、街中でランナーをよく見かけるようになりましたが、中高年がジョギングに励むのはあまりおすすめしません。特に朝は体内の機能やホルモンが寝ぼけている状態なので、急激な変化についていけず、倒れてしまうこともあります。寒さで血管が縮小し、血圧が上がりやすい冬の朝は、特に危険と言っていいでしょう。
だからといって、運動を全くしなくてよいというわけではありません。前出の運動と上気道感染症の調査結果では、感染リスクが一番低かったのは、ほどほどの運動をした人でした。私がおすすめしたいのは、早めに歩くことです。鼻歌を歌いながらリズミカルに歩いていると、抗ストレス作用を持つ脳内ホルモンのセロトニンが分泌。爽快な気分になって、NK細胞の活性化にもつながります。
景色を見る程度の余裕を持ちながら、一日5000歩程度を目安に歩くぐらいが理想です。ムリをする必要はありません。エレベーター、エスカレーターを使わずに階段を利用するなど、「体に強い負荷をかけない」「頑張りすぎない」姿勢で取り組むことが大事です。
また、体がむくんだり、疲労を感じたりするのは、免疫力が落ちているサインです。そんなときは、リンパマッサージを試してみましょう。
全身に張り巡らされたリンパ管の中を流れるリンパ液は、体内にたまった老廃物を回収し、排出する働きがあります。この流れがよくなると、免疫細胞が体内をスムーズに流れて力を発揮するので、不調の改善につながります。
リンパ管の要所には、リンパ液が合流するリンパ節があります。リンパ液の流れ同様、リンパ節に向かって、一定方向にマッサージしてみてください(図)。グイグイと力を入れずに、手でさするようにして優しくもむのがコツです。