費用を追加しないと機能しない欠陥品だった

だが、週刊文春(7/2号)の中で、元海将で金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授がいっているように、迎撃ミサイルを撃つのは、「核ミサイルが撃たれて、その核爆発を止められるか否かの瀬戸際の時です。モノが民家に落ちる危険と比べることには意味がない」という意見に頷けるところもある。

さらに、米国側と約1800億円で契約済みであるため、それをどぶに捨てることになりかねない。それでも河野が決断できた背景には、文春が入手したディープスロートからの「A4判2枚のペーパー」に書かれた衝撃的な“事実”があったからだというのである。

昨年3月下旬に防衛省外局の防衛整備庁職員が輸入代理店の三菱商事社員らと共に、アメリカのロッキード・マーチン社を訪れていた。彼らがその後に提出した報告書には、「LRDR(長距離識別レーダー)自体には射撃管制能力はない」と書かれていたというのである。

先の伊藤教授によれば、射撃管制能力というのは迎撃ミサイルを目標に誘導する能力で、イージス・システムはレーダーと、目標へ自らの武器を誘導する“神経”が一体化しているそうだが、その肝心かなめの神経がないというのだ。そのために、追加で莫大な費用をかけて別システムを組み合わせる必要がある重大な欠陥商品なのだ。

しかし、この報告書は、当時、防衛大臣だった岩屋毅を含めた防衛省上層部には届いていなかった。当時の深山延暁防衛装備庁長官は文春に対して、「それってもうイージス・システムじゃないじゃん! そんな報告があった記憶はない」と驚きを隠さない。

無知蒙昧とはこのことだ

ふざけた話である。そもそもこれは、防衛省から要求したものではなく、安倍首相がトランプ大統領に押し付けられ、仕方なく引き受けることになったのだ。

無用の長物に莫大な血税をつぎ込んだ責任は、間違いなく安倍首相にある。安倍や安倍の周辺が、この不都合な報告書を何らかの形で“隠蔽”したと考えても、無理筋ではないのではないか。

だが安倍首相は、トランプが再選されない可能性が高くなってきたことと、この配備停止を大義名分にして解散を目論んでいるといわれているそうだ。無知蒙昧とはこういう人間を指す言葉である。

森友学園や加計学園問題、公職選挙法違反の疑いが濃い「桜を見る会」前夜の夕食会問題から、憲法を踏みにじる集団的自衛権の容認、理想もリーダーシップもないトランプ大統領への媚びへつらいなどなど、安倍自身に関わる数多くの疑惑に、数え切れないほどの閣僚たちの失言・暴言、日銀、NHKの人事への介入や言論・表現の自由を委縮させる発言、新型コロナウイルス感染対策の数々の失敗、持続化給付金事業に代表されるように、官僚と電通の癒着構造など、安倍のやってきた“悪行”は数えきれないほどある。