100種類以上もの薄力粉を試作

クッキングフラワーは、容器を変えただけの商品ではない。中身の薄力粉も、従前からの袋入りの日清フラワーなどの薄力粉とは、加工方法を変えて、より大きな粒子としている。ボトルの穴に粉が詰まったり、均一に振り出せなくなったりすることのないようにするためである。さらに、振ったときに粉が舞いにくく、水溶きしたときにダマができにくくするなど、用途に合った粒子の開発が進められた。この薄力粉の試作は100種類以上に及んだという。

容器についても試作を重ねた。使い勝手がよいボトルのサイズと形状を見極めたい。振り出すのに適した容器の穴の位置や大きさ、振り出しやすい容器の膨らみやくぼみ、そして容量。さらにスプーンを使ったすり切りの使用などへの検討が進められた。

写真提供=日清製粉グループ
クッキングフラワーの市場導入では、容器のサイズに加えて、穴の形状、さらに中身の薄力粉についても多くの試作が繰り返された。キャップも2通りの使い方ができる

これらの容器開発の諸問題への解は、薄力粉の粒子形状しだいで異なってくる。消費者や料理の専門家の意見も聞いておくべきだ。当然、多くの試作を重ねることになった。

使われ方の変化を統合アプローチでとらえる

生活シフトに対応するために、容器のサイズだけを変えるのであれば、問題は単純である。これでよいのなら、着眼の切り替えでマーケティングの勝負がつくことになる。

しかし、日清フーズは、使われ方の変化をとらえるために、多面的な組み合わせ問題となる統合アプローチに挑んでいた。クッキングフラワーの市場導入では、容器のサイズに加えて、穴などの形状、さらに中身の薄力粉についての多くの試作が繰り返されていた。この組み合わせ問題を解決しなければ、一見便利そうだが、振ると粉が散ったり、使っているうちに穴が詰まったりする、使い勝手のよくない、残念な商品に終わってしまう。

クッキングフラワーのマーケティングを振り返ると、組み合わせ問題はさらに複雑になる。たとえば、既存の「日清フラワー」のブランドをいかに活用し、店頭への陳列とプロモーションをどう進めるかといった課題もあった。そもそも各種の開発に投じる時間と費用を回収できるだけの市場の規模が見込めるかの検討も行われた。

統合アプローチは、生活のシフトをとらえて、広く愛用される商品を生み出すことにつながりやすい。そして組み合わせ問題に入念に取り組み、完成度を高めておくことは、競争上の参入障壁の形成にもつながる。

発売後のクッキングフラワーの家庭での利用は確実に広がっている。発売初年の2015年には、日清フーズの薄力粉商品に占めるクッキングフラワーの構成比は14%だったが、2018年には21%にまで広がっている。