ありそうでなかった商品
クッキングフラワーは、ありそうでなかった商品である。小麦粉(薄力粉)のトップ・ブランドである「日清フラワー」の派生商品として、2015年に発売された。発売後約5年間の販売累計は2600万個である(ボトルと詰め替え用を合わせた数字、2020年3月末時点)。ボトルタイプは150グラムで220円(税抜)。その重量当たりの価格は非加工の小麦粉の約6倍。この少量パックは推定で日本の家庭の約20%に普及していると見られる。
クッキングフラワーは、薄力粉を小容量のボトルにつめた商品である。コンロまわりに置いて、調理時に薄力粉を少量使いするときに、片手でパパッと振りかけたりして使うことができる。中身も普通の小麦粉とは異なる特殊加工がなされている。
近年の日本ではフルタイムで働く女性が増えるなかで、家事に手間をかけず、より短い時間で行うことへのニーズが高まっていた。この変化をいち早くとらえて日清フーズが新しい薄力粉の使い方を提案したのが、クッキングフラワーである。
家庭での薄力粉の用途は広い。使用量が多いのは、お菓子やお好み焼きなどを焼くときである。
加えて薄力粉には、幅広い少量使用の用途がある。レシピには「小麦粉少々」と書かれていたりする。家庭での使用頻度が最も多いのはトンカツの打ち粉だというが、豚肉のしょうが焼きや、サーモンのムニエル、ぶりの照り焼きなどの調理で、タレをからませたり、ジューシーに仕上げたり、味をなじませたりするためにも使用される。
にもかかわらず、使う側にとっては、面倒だったり、粉が散ってキッチンを汚したり、といった不満もあった。ホワイトソースを手作りする際にも薄力粉を使うが、少しずつていねいに鍋で溶かしていかないと、ダマができてしまい、イライラする。