昔の夢が叶う“オジサンホイホイ”なバイク

とすると購買層は、どのあたりだと予想されるのか。

「メインターゲットは、オジサン年代のライダーでしょう。80年代に日本でも売っていたCT110に憧れていた人が、歳を重ねて懐に多少余裕もでき、昔の夢を叶えるべくCT125を買う、というパターンですね。近年のバイクのトレンドとなっている、ネオクラシック志向にも合致しますから、まさに“オジサンホイホイ”的な商品になりそうです」(市本氏)

CT125の“元ネタ”となった、1980年代のヒットモデルCT110

しかもCT125は回顧派のオジサンたちだけでなく、年代を超え、さらにエントリー層をも巻き込む社会現象的ヒットにまで広がる可能性を秘めているようなのだ。

そう考えられる理由はいくつかある。

第一には、昨今のアウトドアブームの後押しだ。

「軽SUVのジムニーがヒットした理由もそうなのですが、タフな雰囲気を演出できるだけでなく、その気になれば本格的な酷使にも耐えるというギアが非常にウケています。そこへこのところのキャンプブームも重なるわけですから、かなりの追い風が吹いている状態。僕の同業者の中でも、すでにCT125を注文した人が4、5名います。彼らはみんなキャンプを趣味にしていて、若いのから中年まで年齢層はバラバラ。玄人筋までがこれだけ買う気になるバイクは、最近ではちょっと珍しいですね」(バイクジャーナリストの谷田貝洋暁氏)

「先日、グッズ紹介系の雑誌から依頼があり、『ヤングマシン』のカメラマンがアウトドアっぽい風景をバックに撮ったCT125の写真を提供したんです。その手の雑誌でバイクを取り上げることはよくあるんですが、写真まで貸してほしいという申し出は初めてのこと。バイク専門誌以外のメディアでは、CT125のことを魅力的なアウトドアグッズと受け止めているようです」(前出・市本氏)

3密とは無縁で、奥さんの理解を得やすい

第二に、コロナ禍以降の「3密」回避の風潮も見逃せない。

写真=ヤングマシン
リアキャリア(荷台)が大きいので、積載性は抜群

「朝晩の満員電車で新型コロナウイルスに感染するリスクを避けるため、バイク通勤に切り替える人が増えているんです。これはデータでもはっきり出ていて、日本自動車工業会によると、今年2月、3月の国内2輪出荷台数は、連続で前年同月より増加しています。特に3月の実績が前年同月比を上回った(107.3%)のは、実に3年ぶりのこと。その原動力になっているのが、51cc~250ccの排気量クラスの伸長で、CT125はまさにそこに当てはまります」(市本氏)

CT125も含まれる125ccクラスは、最近注目を浴びているカテゴリーだ。最高速度が60km/h(原付は30km/h)で原付のような2段階右折の義務がなく、二人乗りもできる。それでいて車両価格がさほど高くない上、保険料は割安と、コスパにも優れている。

「社会人の場合、バイクに乗りたいんだけど危ないからと家族に反対され、二の足を踏んでいる人が少なくありません。でも今なら、電車での3密回避を理由に大手を振ってバイクに乗れます。しかもCT125は、ベースがスーパーカブ。バイクを知らない人でも、カブなら危険な運転とは無縁だとなんとなくわかりますから、奥さんの理解を得やすい(笑)。そして休みの日のレジャーとしても、住んでいる都道府県内の林野へツーリングに出かければ、3密とは無縁で楽しむことができます」(谷田貝氏)