勉強の強要は、かえって勉強嫌いを増やしてしまう

つらい努力を重ねるほどに学力が向上する。そうした価値観とは別の研究は、ほかにも報告されています。例えば、「グリット」研究(※)の第一人者であるペンシルバニア大学の心理学者、アンジェラ・ダックワース教授も、「必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事」と述べています。

※困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けられる力

さらに、臨床心理学者のジョセフ・バーゴ博士によると、「純粋に好きなことに打ち込んでいる人のほうが成功しやすい」と言います。家で子どもに学力をつけるには、こうした楽しいアプリや動画などを活用しながら、まずはワクワク感を引き出してあげる必要があるのです。

もちろん努力は大切ですが、子どもの意向を考えず、親が勉強をノルマ的に強要する方法は、かえって勉強嫌いを増やしてしまう非科学的な手法といえるのかもしれません。

(2)「ぼーっとする」時間を大事にする

わが子が、ぼんやりとしているのを見ると、「ぼーっとしている時間がもったいない、何かしなさい」とダメ出しする親は少なくないでしょう。でも子どもは、毎日さまざまなことから十分すぎるくらいの刺激を受け、体も脳も、大人が思う以上に疲れています。

そもそも、ぼーっとしているときにも、人の脳内ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という脳回路が働いています。今、このDMNが、私たちの脳の中に散らばる「記憶の断片」を無意識のうちにつなぎ合わせ、思わぬ「ひらめき」を生み出しているのではないかと注目されています。偉大な科学者アイザック・ニュートンが万有引力の法則を発見したのも、学生時代にペストの流行で大学が閉鎖となり、ロンドンから離れた郊外でゆっくりと過ごしていた時だったと言われています。

これから進化するAIの時代に、人はクリエーティブであることがますます大事になると言われますが、子どもの創造力を伸ばすにも「ぼーっとする」時間が必要なのです。

(3)「家族との対話」で批判的思考力を伸ばす

子どもは一日中、とりとめもない話をします。「おしゃべりばかりしていないで、他にすることたくさんあるでしょう!」と叱ってしまう親は子どもの話を最後まで聞かず、「●●の練習は?」「■■はやったの?」などと追い立て、子どものスケジュールを埋めてしまおうとします。

加藤紀子『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)

けれども子どもは、身近な大人に無条件に聞いてもらえることで、安心感や落ち着き、自信、認められた喜びを感じます。そして、「話すことが楽しい」「もっと話したい」と思うようになり、そこから豊かな表現力、語彙力も育まれていきます。

実際に、脳機能開発が専門の東北大学、川島隆太教授が仙台市に住んでいる約7万人の小中高生を2010年から7年にわたり追跡調査したところ、「家の人にしっかり話を聞いてもらった」と答えた子は、学力が上がる傾向が見られました。

川島教授は「プレジデントFamily2017年秋号」で次のように述べています。

「『家族のコミュニケーション』がしっかりしている子は、何かがきっかけになって探究心などの『学習意欲』が高まっていきます。そして、『学習意欲』が高まると、自主的な学習習慣が付き、『学力向上』へとつながっていきます」