教育分野のテクノロジーは日進月歩だ。それにあわせて、「子育ての常識」もどんどん更新されている。『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)を書いたフリーランス・ライターの加藤紀子さんは「『努力は裏切らない』という考え方はもう古いようです。最新の研究では、やみくもにつらい努力をするよりも、アプリを使って遊びながら勉強したほうが学力は向上しやすいことがわかっています。子育てにも最新のエビデンスを活用するべきです」という——。

頭のいい親が「勉強しろ」と言わずに、子どもをやる気にさせる方法

突然の休校措置から約3カ月。ようやく多くの学校が再開されましたが、新規感染者が連日報告され、第2波の可能性も指摘されるなど、予断を許さない状況が続いています。

一方で、子どもがステイホームの間、親御さんからは「肉体的にも精神的にも、もう限界……」という声があちこちから聞こえてきました。3度の食事に加え、学校からの課題は家庭に丸投げというケースも少なくありませんでした。親は付きっきりで子どもの勉強を見なければならず、その労力は本当に大変なのです。

とはいえ現実問題として、親子ともに新しい生活スタイルに少しずつ慣れ、スムーズに対応できるようになっていく必要があります。いつでも学校に行けるのが当たり前ではなくなったことによってこれまでの「子育ての常識」は変わり、家でも学力を含む教育面でのフォローを十分にできるように備えることが当たり前になったのです。

私はこのたび、「家で親がしてあげられること」を集めた『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)を上梓しました。これまでの常識をアップデートするために、最新のエビデンスを参照して、新しい子育ての教科書を目指した1冊です。本書から、いまこそ役に立ててほしい子育て法を紹介します。

(1)「アプリ」でワクワク感を引き出して学力を伸ばす

子どもに家で勉強をさせようと思っても、「つまんなーい」「やりたくない」と投げやりな反応が返ってくることは多々あります。そんな子どもに対し、「勉強が楽しくないかもしれないけど、コツコツ地道にやればそのうち……」などと説得しようしていませんか。おそらく親も、自分の親に口酸っぱく言われて育ったケースが多いから、子どもにもついそう言ってしまうのではないでしょうか。

ところが「地道にやることこそ大事」「遊びは勉強の妨げになる」「努力は裏切らない」という親の固定観念をくつがえす最新の研究成果があります。

子どもの感性で思考力を伸ばすアプリ教材やSTEAM教育教材を開発しているワンダーラボ(旧花まるラボ)が行った実証実験では、空間認識や平面図形など、思考センスの基礎要素を楽しみながら身につけられるアプリ「Think! Think!(シンクシンク)」を毎日15分プレーすると、3カ月後、学力が本当にアップするという結果が出ました(※)。注目したいのは、この子どもたちにとっての「遊び」によって教科書で学ぶ計算力や文章題までもが上達したことです。

※カンボジア国内のモデル校5校・計1636人の児童を対象に、3カ月間にわたり実施。対象児童をシンクシンク実施群(807人)と非実施群(829人)に分けた。その結果、3カ月後に行われたカンボジア国家学力テスト(算数)で、シンクシンク実施群が非実施群に比べ、偏差値にして平均約6.9ポイントの向上。国際的な学力調査として知られるTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)でも平均約6.0ポイント、IQテスト(田中B式)では平均約8.9ポイントもの向上が確認された。