この出費や紙幣増刷もコロナ禍のような非常事態だからやむを得ないかとも思う。

ただ非常に大きな問題はこの借金をする前に、国はすでに1114兆5400億円もの借金をしていた点だ。今年の税収+税外収入は70兆円、歳出は160兆円、借金が90兆円だけなら今後どうにでもなっただろう。しかし、すでに巨額な借金があることが痛手なのだ。

「今年はいつもの3年分の借金を積み増しただけ」

前述した私の友人の大学教授は、今年の借金の巨額さに驚き、心配になったわけだったが、実はこの90.1兆円の今年の赤字(借金)は例年の赤字のたった3年分弱にしかすぎない。日本はバブル崩壊以降、30年にわたって毎年30数兆円もの巨大赤字を垂れ流してきた。今年は例年と違い、いつもの3年分の借金を積み増しただけ、なのだ。

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大学教授が心配するようにコロナ禍対策の支出で日本の財政がおかしくなるのではない。この30年間の赤字垂れ流しの結果で日本は危機に直面するのだ。今後起こりうる悲劇は、長年「財政再建を怠ってきた」ツケ、人災なのだ。コロナ禍は、その悲劇の「引き金」にすぎない。

コロナ対策で新規国債発行額が例年の3倍になるだけなら、「Xデーの引き金を引く」などと心配する必要もなかったかもしれない。本稿の最初に書いたように、コロナ禍より前から大掛かりに財政ファイナンスをしていたのは日本だけであり、財政ファイナンスは世界の市場の主要トピックではなかったからだ。

しかも1970年代から80年代のように日本経済が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされ、世界中の投資家の目が日本に向けられていた時代と今は違う。

日本経済が40年間断トツのビリ成長だったせいで、日本市場は世界の投資家の興味の対象から外されている。しかし、世界中が財政ファイナンスを始めたことで、日本が再度注目されてきたと思う。

「財政ファイナンス」の先頭を走る日本に世界が注目している

前々回書いたが、日銀は世界の市場や中央銀行にとって、炭鉱のカナリアだ。日銀の対バランスシート規模対GDP比は、ほぼ110%に達しているのに対し、FRB(米連邦準備制度)は約20%、ECB(欧州中央銀行)は約40%にすぎない。このメタボ体質からも明らかだが、日銀は財政ファイナンスの最先端を走っている。

世界の中央銀行は、財政ファイナンスで断トツを走る日本がハイパーインフレになったら「すぐ方向転換をしよう」と、日銀や日本市場の動きを注視しているだろう。「どこで儲けようか?」と虎視眈々と狙っているマーケットは一層のことだ。