「伝搬の速度がきわめて速い」と警鐘
連鎖は続く。同26日には京畿道富川(キョンギド・プチョン)市のECサイト、クーパン物流センターで60人が感染、臨時閉鎖に追いやられ、さらにソウル松坡区(ソンバク)のマーケット・カーリー物流センターでも感染者が発生した。ここでの感染者の中には、1600人あまりが勤務するコールセンター職員も含まれていた。このため、各所に勤務する4000人以上の人々が自宅隔離に追いやられたという。韓国政府は28日、ソウル市など首都圏を中心に6月14日をリミットとする外出・イベントの自粛を呼び掛けた。
このうえウイルスの遺伝子が大きく変異していれば、これまで行っていた対策を無にしかねない。防疫当局は遺伝子じたいの変化は確認されていないものの、「伝搬の速度がきわめて速い」という警鐘を鳴らしている。
「日本は紙と鉛筆と電話で感染者を追う」と酷評
そもそも韓国内での本格的な感染拡大の発端は、今年2月16日、大邸市でキリスト教系の新興宗教団体「新天地イエス証しの幕屋聖殿」の大規模な礼拝で2000人超の感染爆発が起きたことだったが、文大統領はその3日前の13日にも、韓国産業の6大グループの経営トップと経済界のコロナ対応を協議する場で、「防疫管理はある程度安定的な段階に入ったようだ」「コロナ19は遠からず終息するだろう」と言い切ってしまっていた。
大見得を切ると、実態が逆に動く。一国のリーダーとしては、かなりみっともない姿を晒したことになる。しかし、ワイドショーを始めとする日本の国内メディアの“韓国を見習って、PCR検査を増やせ”と主張する「韓国推し」は壮観ですらあった。たとえば、4月23日付ニューズウィーク日本版では、「なぜ必死で韓国を見習わないのか」「100%真似すべき」と主張。紙と鉛筆と電話で感染者の経路を追う日本の保健所のやり方を「戦車に竹やりで向かう以上の戦い」「ロケットに弓で対抗」とこき下ろした。
しかしこの第2波発生を受けて、韓国主要紙は「日本が韓国を羨ましがる時間はそんなに長くなかった」「日本の各メディアの記事の論調から読者の反応までもが一瞬にして変わった」と、日本国内での受け止め方の変化を表現している(5月23日付朝鮮日報、イ・テドン東京特派員)。
自画自賛「“伝授してほしい”と全世界から要請が殺到」
“感染再発”の経緯を少し詳しく見てみよう。この第2波の中核となってしまったソウル市内のゲイクラブでは、270人のクラスターが発生。入店の際に義務付けられていた名前と連絡先など個人情報の記入も、約5000人分のうち2000人は虚偽。感染防止には初動が大きくものをいうが、追跡ができないために初動が遅れてしまい、7次感染まで拡大させてしまった。
富川市の物流センター内の飲食店では、「100人余りの勤労者が肩が触れ合う距離で座って食事を取り、仕切りも最初の患者が発.した後で設置された」(聯合ニュース)。休憩室や喫煙室などにはマスク未着用者も多数。「アルバイトなど日雇い労働者が多く、『体調不良の場合は3~4日休む』という規則が事実上無きに等しかったという指摘がなされている。
韓国の国内メディアが一転、叩きの標的としているK防疫だが、第2波が来る寸前までは、「全世界から国内新型コロナ対応経験を伝授してほしいという要請が殺到した」ため、その伝授のために何と約2時間のウェブセミナーまで開いていた(中央日報)。毛嫌いせずに、少し詳しく見ておくべきだろう。