固定費が重い、鉄道

人の移動が止まったことで、鉄道業界にも影響が出ています。2019年度のJR東日本の決算は、大幅な減益となっており、営業利益は前期比22%減の3808億円でした。20年度の業績見通しについては、「未定」となっています。鉄道業界の構造の特徴は、固定費が高い点です。売上高の増減にかかわらず、固定的に発生する費用、例えば、車両や線路の維持管理費用や人件費が重くのしかかります。

テレワークやウェブ会議が定着し、乗客数が減ることは予想されますが、内需に関しては、徐々に戻り始める可能性があります。JR東日本、JR西日本、JR東海に関しては、株価の反発が弱く「7割経済」を強いられる中で、株価も「7割戻し」といったところです。JR東日本は、通勤・通学など在来線の日常利用が一定割合を占めており、JR東海は出張や観光などの新幹線の利用が中心、JR西日本の2018年度単体売上高営業利益率は15.3%で、JR東日本やJR東海と比べると低いといった、それぞれの違いにも注目が必要です。この中では新幹線の比重が高いJR東海が危ないでしょう。テレワークの進展による通勤の減少、ネット会議の進展による出張の減少など、今後はJR各社の経営戦略も軌道修正を余儀なくされるのは間違いありません。

一方、小田急電鉄に関しては、コロナ以前の水準にまで株価が戻りつつあります。「とりあえず近いところに旅行に行きたい」人たちが動きだすことから、箱根に強い小田急電鉄は「10割戻し」となっています。(6月2日時点)

地獄の百貨店、増収増益のニトリ

小売は4~5月も厳しい局面が予想されます。家庭の財布のひもも堅くなっていることから、消費のV字回復は難しいでしょう。消費行動も、都市部から自分の生活圏へ、外食から内食へと移っています。その中で、百貨店の苦戦が続き、生活圏に近いドラッグストアや食品スーパーが堅調と明暗が分かれています。大手百貨店が6月1日発表した5月売上高速報によると、各社ともに70~90%の大幅に減少しました。高島屋が64.2%減、大丸と松坂屋のJ.フロントリテイリングは72.7%減、三越伊勢丹ホールディングスは90.2%減、そごう・西武は61.5%減と厳しい状況が続いています。

一方、ニトリはコロナ禍でも「増収増益」を発表し、似鳥会長は「不況こそチャンス」と述べたことに、市場は驚かされたました。結果、巣ごもり需要のなかで、家庭の住環境を変えた需要をうまく取り込み、5月の既存店売り上げも0.6%増と検討しています。「不況になれば建築費は半分になり、既存物件も手に入りやすくなる。来年から再来年にかけて投資が安く済む」と話しています。アパレルは、レナウンを象徴として厳しい状況が続いていますが、ファーストリテイリングは機能性重視、快適さ重視の流れに乗っています。