「上陸が許可されました。しかし……」
・あなたは、船内の自室で待機をお願いした健康観察期間が終了し、新型コロナウイルスに感染しているおそれはないと判断されたため、検疫所長より上陸が許可されました。
・しかしながら、念のため、下船した後も、以下のような行動をしていただきますよう、よろしくお願いいたします。
*一般的な衛生対策を徹底してください。(一部略)*健康状態は毎日チェックしてください。
・毎日、体温測定を行い、発熱(37.5℃)の有無を確認してください。
・咳や呼吸が苦しくなるなどの症状の有無を確認してください。
・厚生労働省(又は保健所等)より、定期的に電話・メールであなたの健康状態を確認させていただきますので、確実に連絡のとれる連絡先をご記入し、下船時に検疫官に提出してください。
*咳や発熱などの症状が出た場合
・そのような場合には、学校や会社を休み、不要不急の外出を控えてください。やむを得ず外出する場合は、必ず、公共交通機関の使用は控えてください。
・マスクを着用し、あらかじめクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していたことを電話連絡し、すみやかに医療機関を受診してください。
・受診した場合は、厚生労働省健康フォローアップセンターにご報告ください。
電話:03―5253―××××(内線4757、2430)
夜間:03―3595―××××
メール:××-up@mhlw.go.jp
1カ月過ごした部屋とバルコニーともお別れ
本来「健康カード」なるものは「上陸許可について」の注意・付属文書であるだろう。しかし実態はこちらのほうがメインになっていき、「上陸許可について」の「日常の生活に戻ることができます」の文言はなかったことになっていったのだ。それは帰宅して、ふたたび14日間の蟄居生活をし、再度PCR検査を受けなければならなかったことでわかる。また目を疑うのは「やむを得ず外出をする場合は、必ず、公共交通機関の使用は控えてください」という文言だった。
もし厚生労働省がこのような処置は「咳や発熱などの症状が出た場合」の念のためのものだというなら、「感染しているおそれがないことがあきらかである」とか「日常生活に戻ることができます」などの文言は書くべきではないし、万が一のときを考えれば横浜駅で解散などは許されないことなのだ。
船での隔離がいかに中途半端で危険なものであったか、この2つの文書がよく示している。
10時45分、私たちのグループNAVY(荷物につけたタグの色)は予定どおり呼び出され、下船口四番デッキに行く。部屋を出る前、ちょうど1か月過ごし続けた部屋とバルコニーの写真を撮った。すると、いうにいわれぬ複雑な感慨に襲われ、思わずこみ上げるものがあり、あわてて感情を押さえつけなければならなかった。