情報通信産業だけはGDPにプラスに寄与
特にこの15年間の変革のスピードが異常でした。インターネットやAIが、一気に花開いた時期に、アメリカや中国は産業のアップデートを進めてきました。日本においては、実は、情報通信産業(ICT)だけがGDPにプラスに寄与しています。総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成30年)のデータによると、実質GDP成長率への情報通信産業の寄与度を2000年から4年刻みでみると、情報通信産業の寄与度はいずれもプラスとなっているのです。日本はICTしかGDPがまともに伸びていないのです。
でも、たしかに他の分野は何もできていませんでした……。むしろまっしろと言っても過言ではありません。これを、しっかりと他の産業でも着手できれば、十分に成長余力があると言えます。むしろ、この程度の“本気度”でGDP3位を維持していることの粘り強さの方が驚きなのです。
シニア層へ回すお金が多く、研究開発に回すお金がない
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング)の著者である安宅和人氏によると、日本は若い世代への投資、未来の成長力に使うお金が削られ続けていると述べています。日本の伸びしろを高めるために必要なのがミライにつながるお金の使い方です。
現状、研究機関や大学にかけるお金は、主要国の中で貧弱過ぎるのです。「東大・京大の学生辺り予算は米国主要大学の3〜5分の1です。科学技術予算を見ると、この歴史的な技術革新期に、04年以降、韓国は倍、ドイツは1.4倍にしている中で、日本は増やすどころかむしろ減少傾向」と驚くべき事実があります。国のリソースの張り方はあまりにも過去に向いているのです。
「国を家族に例えるならば、稼ぎ手の稼ぎよりも多くの金を借金までして、おじいさん、おばあさんに使っていると言っても良い状況だ。我々の未来の世代に対して、そして新しい未来を生むためのR&D(研究開発費用)に十分に投資しなければ、ミゼラブルな未来が待っていることは間違いない。できれば10兆、たとえあと5兆でもいいから未来に向けて振り向けることができたらどれほど大きな事ができるだろう」と日本の可能性に言及しています。