赤字家計ではないのに、娘が母親を非難するのはなぜか

◆家族構成
母(相談者):70代 年金収入 60万円
父:70代 年金収入 240万円
長女:50代 無職 障害年金 78万円
長男:40代 隣県在住 家族は妻と小学生の子2人
◆資産状況
自宅:一戸建て(持ち家)
預貯金:1000万円(父母分)、預貯金:1000万円(長女分)
長男の住宅購入時に援助をし、父死亡の際には渡すものはないと合意済み。
◆家計状況
父母の年金で3人分の生活費はまかなえているのは確かだが、細かい支出費目は家計簿をつけていないため不明。家計を預かる母自身の印象としては、家計は苦しくない。

収入は、Aさんと夫の年金だけで、それぞれ年60万円、年240万円です。

年間の支出は、年間収入の300万円より少ない276万円。具体的な数字のわかる費目は、口座振替の公共料金や電話代などです。家計簿を細かくつけているわけではないので、食費や被服費の額は月によりまちまち。ただ、赤字家計にしないように注意し、毎月2万円を長男(独立して結婚)の孫の祝い事に充てられるよう生活費とは別に積み立てています。

月の支出は1カ月平均23万円です。総務省の家計調査では世帯主が70歳以上の無職世帯の消費支出額は約23万4000円。この統計では世帯人数は2.35人となっているので、3人住まいのAさん宅は家計のやりくりをちゃんとしていることになります。

写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk
※写真はイメージです

では、なぜ、娘は母親を非難するのでしょう。

ついつい強い口調になってしまう娘の「胸の内」

後日、筆者はAさん宅へ伺いました。その際に娘にも話を聞くことができました。実はファイナンシャルプランナーの存在をAさんに教えたのは、娘当人だったのです。プロであれば、母の浪費がわかるはずと考えたようでしたが、あいにくその期待にはこたえられませんでした。

娘は、母親に席をはずすように頼みました。言葉づかいは、「……もらえますか」と一応依頼の形でしたが、その口調は完全な「命令」。怒りのようなものが込められたこの口調で浪費を非難され続けたらめいってしまうだろうと筆者も思いました。

娘は、あれこれ話してくれました。

●結婚できずにいることを親不孝だと思っている。
●一つひとつの家事はできるが、段取りが下手で、ひとり暮らしをする自信がない。
●たまに会う甥っ子たちはかわいくて、自分もお小遣いを渡すのだが、進級や誕生日などに両親が渡す祝儀の金額が気になって仕方ない。
●弟には家族があるので迷惑をかけたくない。
●最近の母親は年のせいか口調が柔らかくなったが、以前はかなり厳しく、生活の相談はできなかった。
●将来の経済的な不安を話すためには、両親の死について触れざるを得ず口にできなかった。

母と娘では気持ちや情報が少し行き違っているように見えました。

そこで、「私も立ち会うので、気がかりに思っているお金のことをご両親に少し伝えてみませんか」と言ったところ、少し考えた後、了承してもらえました。