最重要会見で裏目に出た「紺に黄色のストライプ」

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発出後は、安倍首相が所有する数ある黄色ネクタイの中から、ソリッド(無地)のものと、紺地に黄色の斜めストライプのものがよく締められている。

黄色は進出色でもあるため、他の色より前に突出して見える。よって、この黄色から迫力を生み出し、より説得力を増そうとしているわけだ。同時に、信号にも使われる注意喚起の色でもあるため、人々の注目を集めるのにも効果的な色ともいえる。

写真=首相官邸ホームページ
4月7日に開かれた安倍首相の記者会見。

しかしながら、4月7日の緊急事態宣言発出のような最重要級の会見では、この紺地に黄色のストライプでは、ビジネスマンのような印象や、2色の組み合わせから生じる人それぞれの感情など、視覚的に余計な情報が伴うと見受けた。

5月4日に開かれた安倍首相の記者会見。(写真=首相官邸ホームページ)

5月4日の緊急事態宣言延長に伴う会見では、薄い水色のソリッドなネクタイを着用していた。沈んだ寒色で、国民の苦悩を鎮静化させる狙いがあったのだろう。しかし、緊急事態を解除できないという深刻な状況を伝えるにはソフトな印象かつ落ち着き過ぎで、国民の逼迫ひっぱくした状況とは乖離かいりが見受けられた。

首相のお願いベースの外出自粛呼びかけに、国民はかえって憤りを感じたのではないだろうか? ネクタイの色は、両者の温度差を静かに、しかし確かに語っていたのだ。

国民は、アフターコロナ以降も共に戦う強いリーダーシップを求めている。首相の権威とパワーを最大限発揮するには、戦闘態勢を示す鮮やかな赤のソリッド、例えばトランプ大統領のようなネクタイがふさわしいのかもしれない。

実はしたたかだったストライプの向き

安倍首相が、ここぞという時に巻いているネクタイ。紺地に黄色の斜めストライプが特徴のそれは、アメリカのブルックスブラザーズ社(BB社)の#3というものだ。

この斜めストライプのネクタイは、そもそもイギリスの軍隊の連隊旗が起源で、レジメンタル(連帯)と呼ばれ、カタカナの「ノ」の字の向きのレジメンタルは英国式とされており、日本人にもなじみの深いものだ。

ニューヨーク生活の長い服飾評論家・ケン青木氏によると、1902年に前述したBB社が、このストライプのネクタイを作る際に、ストライプの向きをあえて逆向きに作ったそうだ。この左上から右下に下がるストライプは「アメリカ式」と呼ばれており、実は安倍首相が主に締めているのはこちらなのだ。

安倍首相は、紺地に黄色の縞の他にも、紺地に白やピンク、黄地に紺、水色地に紺縞、赤地に紺の縞等の#3を多用し、他にも黄地に青と白の3色使いの#1等もよく締めている。