月面を日本のローバーが走り回る時代が来るか

「ゲートウェイ」とドッキングさせるためには高度な技術が必要である。まず打ち上げ後に地球周回軌道で二つのモジュールをドッキングさせ、地球から月に向かう軌道に投入する。また月周回軌道への投入と「ゲートウェイ」とのドッキングを実現しなければならず、ハードルは高い。

一方トヨタと共同開発する「月面ローバー」はトヨタが得意とする燃料電池をエネルギー源とする。月で水源が確保できれば、水素エネルギーの利用が可能で、月面を日本のローバーが走り回る時代が来るかもしれない。

JAXAはまた「SLIM」という小型探査機による月面着陸計画を2021年度に実施する予定だ。成功すればソ連、米国、中国に次いで4番目の国となる。インドは2019年9月、「チャンドラヤーン2号」で月への軟着陸を目指したが、着陸直前に着陸機「ビクラム」からの通信が途絶え、失敗した。

米中の熾烈な「月争奪戦」の中で、「はやぶさ」のようなインパクトある結果を残せるか、日本の技術力が試される。

文化大革命の最中も宇宙開発を続けていた中国

中国の宇宙開発は1949年の建国直後から始まり、1966年には初の弾道ミサイル実験に成功した。ロケット開発はミサイル技術をベースとしている。1970年2月11日、日本は旧ソ連・米・仏に次いで人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功したが、その直後の1970年4月24日、中国も「長征1号」ロケットで「東方紅1号」を打ち上げた。中国は1966年から1976年まで続いた「文化大革命」の最中も、宇宙開発を継続していたのである。

1978年に鄧小平の改革開放政策が始まると、宇宙開発は一気に加速した。1992年には有人宇宙飛行計画がスタート、建国50周年となる1999年には宇宙船「神舟1号」の打ち上げに成功した。中国語で「神舟シェンチョウ」は「神州」と同音で、「神州」とは「中国」を称える美称である。

2003年10月15日、楊利偉宇宙飛行士を乗せた「神舟5号」が酒泉衛星発射センターから「長征2号F」で打ち上げられた。「神舟5号」は地球を14回周回した後、21時間後に内モンゴル自治区の「四子王旗」に着陸した。

中国はソ連、米国に次いで、有人宇宙飛行に成功した。ロシアの技術援助はあったものの、国産ロケットで中国人宇宙飛行士を乗せた宇宙船を打ち上げ、宇宙空間で生命を維持し、地上に帰還させた意義は大きく、当時の胡錦涛政権が威信をかけた事業だった。