しかし、新型コロナウイルスの問題は、そうではないと思います。人々は何より「正しいことが知りたい」と強く願っている。しかし、新型のウイルスですから、専門家の方であっても本当のところは分からない部分も多い。

そんな中、できるだけ多くの「事実」や「専門家の科学的な予測」を知り、この先どうなるのか、自分がどうするべきなのか、を判断する材料にしたいと思ってテレビを見ている人がいま多いのではないでしょうか。

コメンテーターの「単なる意見」は求められていない

そういう視聴者には「専門家ではない一般の人」の意見や、「別ジャンルの専門家の見方」はとりあえず必要ないと思いますし、場合によっては邪魔に感じることも多いと思います。「感染はこれからどうなるのか」であれば、感染症の専門家の話が聞きたい。「コロナで経済はどうなるのか」であれば、その分野の専門家の詳しい分析・予測が聞きたいはずです。

みんなが知りたいのは、新型コロナウイルスについての「事実」と専門家の「科学的知見」です。コメンテーターの「単なる意見」は必要ないのではないでしょうか。

僕は、本来テレビのニュース・情報番組に出演するのは、「キャスター」と「専門家」と「取材者」だけでいいと思っています。先ほど書いたように、「問題については詳しいのだけれど、説明がそんなに上手ではないのでわかりにくい」専門家の方のお話についてはVTRできちんとわかりやすく整理すればいい。

あるいはスタジオでキャスターがボードなどを使ってわかりやすく説明し直したり、取材した記者やディレクターが補足すればいいと思います。

コメンテーターを登場させる番組演出はもう、必要とされなくなってきているのではないかと思うのです。

玉川さんは、取材の報告者として出演すればいい

こうした中、コメンテーターによる発言が問題となり、炎上したりする事例も出てきています。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹コメンテーターは4月29日、新型コロナウイルスの検査機関についての自らの発言が誤っていたとして謝罪しました。

発言を誤った原因は「テレビ朝日の記者が都庁のレクチャーを取材したメモの解釈を間違えた」からということでしたが、これは本来、レクチャーを実際に取材した都庁担当の記者がスタジオ出演して解説すれば防げたことかもしれません。

玉川さんは、僕の先輩なのでよく存じ上げています。とても優秀な取材をなさる方なので、あるいはコメンテーターとしてではなく、ご自身で取材をなさってその報告者として番組にご出演なされば良いのではないか、と僭越ですが思ってしまいます。

そもそも、日本のテレビは朝から晩までニュースと情報番組ばかりになってしまっています。こんなにニュースと情報番組ばかりやらなくても良いのではないか? とも個人的には思うのですが、それはこの際置いておきます。

その長い放送時間を埋めるためにコメンテーターのトークで内容を伸ばしている、つまり「事実を意見で水増ししている」と視聴者の方々に思われてしまっては大変です。少なくとも、「事実を伝えている部分」と「意見を述べている部分」を明確にわかるように演出する方法を考えた方が良いのではないでしょうか。