テレビのニュース番組やワイドショーには「コメンテーター」がよく出てくる。「専門家ではない一般の人」として、個人的な意見を述べて視聴者を引きつける。だが元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は「コロナ問題で報道のあり方が問われている。コメンテーターに頼った番組作りはもうやめるべきだ」という――。
専門性よりも大切な「話術」「見た目」「呼びやすさ」
以前、私が担当していたニュース番組で、ひとつの方針を決めたことがあります。それは、「専門家をキャスティングするときには、必ず『本当に詳しい人』を呼ぼう」ということ。
例えば、弁護士さんをキャスティングする場合は、そのニュースで問題となっていることについて、「日本では第一人者だ」と弁護士さんの間で言われている人物にまず声をかけ、断られたら2番目に詳しい人、それもダメなら3番目に詳しい人……という方針です。
ニュース番組の準備は時間との勝負ですから、そうやってお願いしていっても次々に断られる場合も多い。でもそれでも最低限、必ず「専門分野がきちんと合っていて、実際にその事例を多数経験している人」にお願いするということにしたのです。
事件について話を聞きたいのに、スタジオにいる弁護士さんの専門が「民事」だったりしたらお話になりません。
しかし、この方針はキャスティング担当者から思わぬ不評を買いました。まずは作業の負担が大きすぎるということ。そして、「その人の話が面白いかどうかは分からない」ということがその理由です。
それよりはテレビ番組に出演し慣れていて、話が上手い弁護士さんに解説してもらった方がいい、というのです。