短期的な利ざや狙いの投資でやってはいけないこと
こうした長期投資ではなく、今回の株価下落を利用して短期的に利益を得ようという人もいるかもしれない。確かに株価が大幅に下落した後は、急上昇するケースが多く、短期間で大きな利益を得られる可能性がある。
投資資金に余裕があり、一定のリスクを許容できる人なら、短期的な利ざやを狙う投資に取り組んでもよいだろう。だが、経験が浅い人の場合、こうした短期投資は思いのほか大きな損失を出すことがあるので要注意だ。
経験が浅い投資家がよく陥りがちなのが、時間を考慮せず、株価だけを見て投資タイミングを決めてしまうことである。今回のコロナショックで日経平均は2万4000円前後から1万6000円まで急落し、その後、2万円前後まで回復している。市場が安定してきたので、さらに値上がりするだろうと判断するのは早計である。
相場というものは、値幅よりも時間に左右される割合の方が高い。つまり下落相場や上昇相場が一段落するまでには、一定以上の時間がかかる。仮に急激な下落で株価が4分の1になっても、時間が経過していない状況では、さらに下落する可能性も否定できないのだ。株価だけを見て投資を決断するのはやめた方がよい。
短期になればなるほど、株価の動きはランダムに近くなり、偶然性に左右される割合が高まってくる。短期の利鞘狙いの投資は、あくまで余裕資金の範囲内でというのが原理原則である。
歴史的な原油安は「買い」なのか
今回のコロナショックでは株式以上に原油が売り込まれており、今後の急回復を期待する声もある。原油価格は一時、1バレル=10ドル近くまで下落したが、これは歴史的な水準といってよい。
だが、いくらコロナショックで不景気になるとはいえ、石油の需要が消滅するわけではない。普通に考えれば、短期的に値を戻しそうだが、やはりここにも落とし穴があるので注意が必要だ。
今回、原油が過剰に売られたのは、コロナショックによる市場の動揺だけが原因ではない。米国でシェールガスの開発が進み、全世界的に原油が過剰になっていることに加え、社会の省エネ化や再生可能エネルギーの普及によって、需要面でも従来のような伸びは期待できないと見る関係者が多かった。
つまりコロナショックがなくても、マクロ的な要因で石油は余剰気味になる可能性が高かった。こうしたところにコロナショックが重なったことで、過剰な売りが殺到し、原油価格が暴落する結果となった。
この水準の価格が半永久的に続くとは思えないが、従来と同水準まで価格を戻す可能性も低い。そうなると、暴落からのリバウンドについても限定的となり、取ったリスクに見合うリターンが得られないことも十分にあり得る。
個人的には無理に短期的な利益は追わず、長期投資を続けた方がよいと考える。コロナ後の社会の変化を見据え、投資先企業の選定など長期的な戦略を練るというのが今の時期にふさわしい行動だろう。