本当のゲイが少なくなった──。その理由はどこにあるのか? その要因こそインターネットの発達であり、携帯電話の爆発的普及によるものだった。

「かつて、新宿二丁目に人があふれていたのはこの街に来れば出会いがあったからです。この街に来れば友だちだけでなく、その日の夜を過ごす誰かに会えた。でも、いまの若い子はこの街に出会いを求めていません。友だちだって、セックスパートナーだってネットで見つかるから。ゲイ専用のマッチングアプリがあれば、わざわざ新宿二丁目に来る必要だってないんだから……」

メディアに取り上げられることで観光地となった

HIROの言うように、ただ出会いを求めるだけなら、携帯電話さえあればわざわざ新宿二丁目に足を運ぶ必要はなくなった。

新宿駅前のアルタで待ち合わせもできるし、そもそも新宿でなくても、渋谷でも池袋でも、当事者たちにとって都合のいいエリアで待ち合わせをすればいい。

さらに、「ノンケ」と呼ばれる一般層の新宿二丁目進出も街の変容に拍車をかけた。

「本当のゲイの人が少なくなった代わりに、一般メディアに取り上げられることで観光地となり、ノンケの人たちが来る街になりました。その結果、ゲイたちは『ノンケが来るなら、行くのをやめようか』とますます足が遠のいていく。いまでもこの街に来る人たちは、知り合いが店をやっているからとか、なじみの店があるからとか、そういう理由ばかり。すべては出会いなんです。でも、それがすべてソーシャル化しちゃったんです」

恋人を見つけること、友だちをつくること、一夜限りのパートナーを探すこと。いずれも、HIROの言う「出会い」だ。そして、それらすべてのことが、かつてはこの街──新宿二丁目──で行われていた。しかし、いまでは「出会い」だけを求めるのならば、この街に固執する必要も、理由も希薄となった。

徒歩5分の距離を引っ越したが、まるで違う

それでも、HIROはいまもなお新宿二丁目にあり続ける。

「僕が編集長になる直前に、『バディ』編集部はそれまでの新宿一丁目から、ここ二丁目に引っ越してきました。歩いてわずか5分程度の距離でしかないけど、一丁目にあるのか、二丁目にあるのかではその意味合いも全然ちがうと思っています。24時間、この街の様子や人の出入りを見ることができます。夜中に編集作業をしていても、街の騒ぎ声やカラオケの歌声が聞こえてきます。飲みに来ている人がついでに編集部に遊びに来ることもあるし、急に企画を差し替えなければいけなくなっても、外に出ればどこにでもネタは転がっている。この街で雑誌をつくること、新宿二丁目で暮らすことは大きなメリットがあるんです」

新宿二丁目特有の街の喧騒、そして匂いこそ、『バディ』を構成する重要なエッセンスなのである。