医療関係者も買いにきている

コスメショップの男性によれば、「商売よりも世のため人のため」にマスクを販売している。とはいえ、店はギリギリの経営状況のようだ。

「今月の売り上げは前年から9割落ちたよ。ある程度は覚悟できていたけどこの状態が、6月以降も続いたら、店を続けられる自信ない。一度休業しようと思ったけども、お客さんが顔を出してくれたのに、店が閉まっていたら、もう来てくれなくなるでしょ。コロナが収束したら『新大久保でマスク買ったから』ってまた遊びに来てほしいね」

実際に、他県の人や医療関係者がマスクを求めて店に訪れているという。マスクが手に入らない人にとっては、新大久保は貴重な入手場所になっている。

筆者撮影
新大久保の多くの店は個数制限を設けていない。

ただ、新大久保というエリアは複雑だ。とある店舗で店長に取材を断られた時に、同店でアルバイトをしている韓国人男性がポロッと口にした言葉が、印象に残っている。

なかなか売っていることを宣伝できない事情

「店長は新大久保にマスクが多いって知られたくないと思っているんですよ。韓国人が転売しているって日本人に勘違いされたら嫌だから」

たしかに、マスク転売による買い占め行動などは社会的に問題となり、政府も対応に乗り出している。そしてマスクの転売ヤーたちを非難する声が日本中にあふれている。輸入元など聞かせてくれた新大久保のひとたちは問屋から仕入れている人しかいなかったが、マスクを売ることが差別や偏見の火種になりかねないと恐れる韓国人店主や店員の気持ちは、インターネット上にあふれるヘイトスピーチを見ていれば理解できる。

この取材から、マスク不足よりも根深い、日本の問題を突きつけられた気がした。

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