今回の金正恩重体説の起源は一体…

今回の金正恩重体説のデマの起源はおおよそ分かる。20年4月14日に韓国のSNSやYouTubeなどのサイバー空間では、金正恩が脳死状態になったというデマが流れていた。これは、4月15日に実施される韓国での国会総選挙で、北朝鮮との交流を重視する与党への投票を妨害するために流されたデマではないかと言われていた。しかも、その内容は2014年に流れたものの焼き直しと考えられていた。

しかし、総選挙が終わっても、このうわさはサイバー空間で残った。4月15日に金正恩が現れなかったことがそれを後押しした。韓国の有名な北朝鮮研究者さえも、金正恩に何らかの異変があったのではと疑問を持ち始めていた。その中で、Daily NKが、消息筋の話として、金正恩は手術をしたが状況は好転したという報道を流したのである。ところが、CNNの報道によって、重体説が流布し、さらに死亡説まで復活したというのがおおよそのデマ拡散の流れである。

各国政府は、これらのデマには冷淡である。韓国やアメリカだけでなく、日本や中国の政府高官もCNNの報道に対して、否定するか、情報がないと答えた。ちなみに、4月21日に中国外交部スポークスマンにCNNの報道について質問したのは、CNNの記者であったのでCNNの中でも情報が共有されていないことが露呈した。

各国政府の対応と報道しない北朝鮮

米国防総省のジョン・ハイテン統合参謀本部副議長が4月22日に記者会見で話したことが米国政府の認識をよく示している。ハイテンは、金正恩が手術を受け、現在も療養中の可能性があるとの報道について問われると「そのような筋書きを認める、あるいは否定する情報を持っていないと私は断言できる」と語った。その通りであろう。何も情報がないのである。

かつて、外国の情報機関が、金正恩の前任者である金日成(キム・イルソン)や金正日(キム・ジョンイル)の死亡情報を北朝鮮の発表に先立って得たことはない。北朝鮮の一般人もそうである。まして、国外の一般人が各国情報機関に先立って、金正恩の死去を知ることなぞ考えられない。

筆者もまた、金正恩がまだ生きているとか、死亡したとかいうことが断定できない。北朝鮮は何も報道しないからである。北朝鮮にいたとしても、最高指導者の動向はまず分からない。当然であるが、国外にいる筆者も、金正恩がどこにいて何をしているのかは全く分からない。北朝鮮が報道しないのに、最高指導者の動向が外国の一般人でも見れるサイバー空間で流れること、そのものがあり得ない話なのである。

*本稿は4月28日時点の情報で執筆。

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