今後は自国内の資源を用いた経済運営が必要

突き詰めて考えると、コロナ禍の深刻化によって、わが国経済は大きな転換点を迎えている。海外を中心とするわが国への観光需要の高まりは、近年の日本経済を支えた要素の1つだった。

リーマンショック、東日本大震災を経て、2012年12月からわが国の景気は回復局面に移行した。そのかなりの部分が、国内の自律的な動きよりも海外の要因である。

インバウンド需要に加え、“中国製造2025”に基づく中国の工場の自動化(FA)に関する技術や工作機械への需要、労働市場の回復に支えられた米国の景気回復、低金利環境下での米国を中心とした株価上昇による資産効果などがわが国の経済を支えた。

一転して、新型コロナウイルスの感染拡大によって、各国は自国内の限られた資源を用いて経済を運営しなければならない。WTO(世界貿易機関)は2020年の世界全体のモノの貿易量が前年から32%減少すると予想している。海外の要因に支えられてきたわが国にとって、経済運営の効率性はさらに低下するだろう。

また、都市封鎖などへの不安から世界各国で食料品の買い占めが起きている。感染のために農作業に従事する人手が不足し、穀物などの供給難が顕在化している。グローバルな供給体制に基づいてきた世界経済は、その反動に直面している。

世界的に需要が落ち込む中、供給を増やす中国

中国では感染が小康状態になったことを受けて、企業の操業が回復している。鉄鋼などの基礎資材に加え、スマートフォンの生産も急速に持ち直しはじめた。世界的に需要が落ち込む中、中国の供給増大は市況を悪化させると同時に、競争を激化させるだろう。

海外の要素に支えられてきたわが国では、旅行をはじめとする観光業界のみならず、経済全体が縮小均衡に向かいつつある。北海道の地価上昇などインバウンド需要に支えられた地方経済の持ち直しにもかなりのブレーキがかかることは避けられない。

今後、わが国の感染収束にどの程度の時間がかかるかも読めない。民間の自助努力に限りがある中、政府は世論の賛同を得つつ、感染の封じ込め対策を迅速かつていねいに進めなければならない。

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