日本でもいくつかのグループや会社が、空飛ぶクルマの実用化を目指している。

取り組み方が興味深いのは、有志団体として発足した「CARTIVATOR」(以下、カーティベーター)だ。高度な知識が必要とされる分野で、ボランティアというスタイルが面白い。2018年にはメンバーの一部が会社組織の「SkyDrive」(以下、スカイドライブ)を設立し、実用化を目指している。

東大、ドローンメーカー、トヨタ、NECも参入

東大発のスタートアップ、「テトラ・アビエーション」は、ひとり乗りの空飛ぶクルマを開発している。

産業用ドローンメーカーの「プロドローン」は、ふたり乗りの「AEROCA(エアロカ)」と、ひとり乗りの「SUKUU(スクウ)」を準備している。

さらにトヨタは2020年1月、空飛ぶクルマの開発を進めるアメリカのベンチャー、「ジョビー・アビエーション」と協業すると発表した。トヨタは、「電動化、新素材、コネクティッドなどの分野において次世代環境車の技術との共通点も多く、eVTOLは自動車事業との相乗効果を活かした新たなモビリティ事業に発展する可能性がある」とコメントしている。

一方、NECは、空飛ぶクルマが実用化される時代に向けて、管制システムの開発を進めている。

ヘリコプターによるオンデマンドサービスを提供する「AirX」は、空飛ぶクルマの実用化を見すえて、空飛ぶタクシー事業を構想している。

有志団体のカーティベーターを立ち上げたワケ

カーティベーターは、中村翼が代表を務め、その後、福澤知浩が2018年、共同代表に就任した。

カーティベーター代表の中村翼氏(写真提供=カーティベータ―)

まず中村に、まるで空飛ぶクルマを開発するためのペンネームのような「翼」という名前について聞いてみた。

「人気マンガ『キャプテン翼』の主人公ように、明るく元気に育ってほしいという思いを込めてつけた名前だと聞きました」

1983年に「キャプテン翼」がテレビアニメ化されて、日本中にサッカーブームが巻き起こった。中村が生まれたのは、その翌年である。その名前が、いまの仕事に影響を与えたのだろうか。

「大学では流体力学を研究しました。そういう分野では必ず、飛行機の翼が出てきます。名前が興味を持たせたのか、無意識に引き寄せられたのかもしれませんね」

小学生のころから自動車のエンジニアになることを目指し、願いがかなってトヨタに入社した。

「実際にエンジニアになると、ただクルマを作るだけではなく、次の世代に夢を伝えられるような、『ぶっ飛んだことをしたい』という思いが強くなっていきました」

そんなころ、会社の懇親会で出会ったのが、3歳年下の福澤だった。