怪我をして収入が完全に途絶えた
「翌月からは失業手当が出るようになったのでこのアルバイトはすぐにやめました。だけど失業手当は1カ月間(28日)で13万円。東京の生活保護費と同じくらいでしょ。本当はいけないのですが生活が成り立たないのでハローワークには内緒でアルバイトをやっていました。アパート近くのクリーニング屋さんで洗濯物の受け渡しを」
夕方3時間だけで火木土の週3日。時給1000円だったがこのアルバイト代が月3万6000円。これで何とか生活していけた。
「次の職探しもボチボチ始めまして。自分ができることと言ったらコンピュータ関係だけ。ハローワークには求人が多数あったけど下請け、下請けの下請けみたいなところばかりでブラック度も高そうでしたね」
何社かは面接したが半年以上のブランクを問題視されて不採用。ハローワークの指導員からは営業職や販売職も勧められたが接客業は嫌だったし、自分には向いているとも思わなかった。
「どうしようかなあと迷っているところで、間の悪いことに今度は足の骨にヒビを入れる怪我をしてしまいまして」
雨の日にアパートの階段を小走りに上がろうとしたときに雨水で滑って転倒。左足のくるぶしにヒビが入る怪我を負ってしまった。
「ギプスで固められて松葉杖です。全治4~6週間という診断ではハローワークに通うのも就職情報会社が主催する企業説明会や合同面接会などに参加するのも無理。完治するまでアパートの自室で養生するしかありませんでした」
治療費は郵便局の簡易保険に入っていたので補償されたが失業手当は90日で終了。クリーニング屋さんのアルバイトも辞めざるを得なかったので収入が完全に途絶えた。
とうとう食い扶持まで借金に
このピンチをしのぐために手を出したのが銀行カードローンだった。
「前の会社の給料を振り込んでいたのがY銀行でして。本当に少ないのですが20万円の定期預金もあった。だから貸してくれたんでしょうね」
限度額50万円で金利は14%。
「早い話、20万円の定期預金が担保ということだと思います」
消費者金融にはフリーターやパートの方も歓迎とか、初めての方は30日間利息ゼロというところもあったが、商店街の一角や駅ビルにある無人契約機の前に座るのは抵抗があった。
「消費者金融と格好つけてもサラ金でしょ。やっぱり危ない、怖いというイメージもあるし。サラ金より銀行の方が安心という思いもありましたね。所詮は同じ金貸しなんだけど」
借りたのは15万円を2回で合計30万円。生活費のためだ。
「とうとう食い扶持まで借金かと落ち込みましたよ。何か堕ちるところまで堕ちたというか、惨めなものですよ」
新しい仕事が見つかったのは18年の8月。多少のブラック加減は仕方ないと割り切って何とか採用してもらったのがWeb制作を請け負っている零細企業。
「水商売とか風俗関係のホームページやネット専用の広告を作っているところです。キャバクラ、フィリピンパブ、ガールズバー、パチンコ屋、居酒屋、派遣型風俗業の広告や求人案内を作っています。世の中にはいろいろな商売があると思う」
心配していたブラック度はそれほど高くはない。サービス残業は月20時間近くあるが土日、祝日は完全に休めるのでマシな方だと思う。
「給料は24万円、手取り20万円ぐらいですね。賞与ありとなっていたけど寸志程度らしいので想定年収は300万円に届くか微妙なところだけど贅沢を言っている場合ではありません。とにかく働いて稼いで借金を返さないと」