仕送りは月3万円、奨学金は絶対に必要だった
野坂さんが大学受験した当時も実家は住宅ローンを抱えており、塾や予備校などに通うことはできなかったそうだ。だから東京の私大に通うためには奨学金は絶対に必要だった。授業料などは親が出してくれたが仕送りは3万円だけ。あとは奨学金とアルバイトが頼みの綱。アルバイトは飲食店と日雇い派遣を掛け持ちしていたという。
「奨学金は第2種で月8万円貸与してもらいました。今になって考えると借り過ぎだったと思う。返済についても甘く見ていましたね」
4年間の貸与総額は384万円。利子は年利にして1%と低いが返済総額は432万円にもなる。そもそも奨学金が実質的に借金だという自覚も足りなかった。
「卒業後に就職したのは大手電機メーカー傘下のソフトシステム開発設計会社です。見習いのプログラマーからスタートしました」
給料は基本給に固定残業代と若干の手当が付いて額面21万円、賞与も年に2回支給だから世間相場並み。先輩たちの話では勤続5年で年収が400~420万円になるということだったので奨学金の返済は簡単だと思っていた。
旅行のためにもお金を借り、卒業時点で借金総額492万円
「奨学金の返済は就職して7カ月目から始めました。月々の返済額は1万8000円です」
給料の手取りは18万円近くあったのでこれだけなら問題ないが、実は他にも借金があって、それも返済していたから余裕はなかった。
「ひとつは自動車教習所の運転免許ローンで30万円。学生ローンも2社で30万円ありまして」
学生ローンのひとつは就職活動の費用に充てるために借りたもの。スーツ、鞄、靴などの購入費に加え、名古屋や大阪が本拠地の会社への会社訪問や企業説明会、OB訪問のために必要だった。
「もうひとつは卒業間近に借りてしまったもので、卒業旅行と引っ越しに使ってしまいました。当時はお金がないから諦めるということはしたくなかった」
学生時代の体験は貴重だからと思っていたが、今になって考えると奨学金だけで384万円も借りているのに、さらに旅行で借金を重ねるのは浅はかでしかない。しかし、当時は考えが回らなかった。
「恥ずかしい話ですが、大学を卒業して今日から社会人スタートですという時点で自分は492万円の借金を背負っていたわけです。背筋が凍る金額ですよね」
運転免許ローンと学生ローンは利子がそれぞれ8%、15%と高い。2年24回で返す予定だったので毎月元本部分2万5000円と残高に連動する利子分を支払う。さらに奨学金の返済も始まったので毎月の返済総額は4万3000円以上だった。
生活費は家賃が6万4000円、水道光熱費が1万円。固定電話代込みの通信費が8000円。毎月8万円ほどが固定費として出ていく。これに借金の返済4万3000円が加わると12万5000円。
「残りの5万円ちょっとのうち食費が2万5000円。お小遣いを1万5000円とすると残るのは1万2、3000円だから余裕なんてありませんよ」