まさかの「カラオケボックス」でテレワーク

コワーキングスペースを飛び出してしまったので、道端で途方に暮れることになった。仕事はまだ残っている。他のコワーキングスペースに行こうと思ったが気持ちが乗らないし、カフェも同じように混み合っているはずだ。どこか利用できる個室はないのかスマホで検索したところ、想定していなかった施設が見つかった。

カラオケのビッグエコーである。

『オフィスボックス』という名称でテレワーク用にカラオケボックスを貸し出しており、ソフトドリンクの飲み放題付きで1時間の利用料金は600円。延長は30分300円だ(いずれも税別)。コワーキングスペースよりやや高めの価格設定だが、個室と考えれば低価格といえる。

早速、すぐ近くのビッグエコーに行ってみることにした。「オフィスボックスを利用したい」と受付で言ったところ、すぐに部屋に案内された。当たり前だが、いつも利用しているカラオケボックスである。

しかし、個室のオフィスとしてみれば、設備は充実しているといっていい。扉を閉じれば外部からの音はほとんど遮断されるし、ソファの座り心地と机の高さのバランスが良いので長時間のデスクワークも問題ない。電源、Wi-Fiも完備されており、個室なので周りの目を気にせず電話の受け答えもできる。机の上に広げた資料を他人に見られる心配もない。

オフィスボックスを2時間ほど利用させてもらったが、仕事をするには完璧な環境だった。もう少し時間があれば、食事をして、酒も飲んで、1曲ぐらい歌いたい気持ちもあったが、さすがに帰れなくなりそうだったので、後ろ髪を引かれながらも部屋から出ることにした。

昼間の利用のために、2017年から始めていた

ビッグエコーを利用した後、ひとつだけ大きな疑問が残った。

カラオケボックスは「密閉」「密集」「密接」の急先鋒として、早々に利用を控えるようお達しが出た娯楽施設の一つだ。それならば、テレワークが注目を集めている状況では、もっとオフィスボックスのPRに力を入れるべきではないのか。

オフィスボックスの告知は店頭に貼られているポスターぐらいで、大きな宣伝活動は行っていない様子だ。ネット広告も展開しておらず、検索でようやく見つけ出したほどで、これといって目立った販促活動は行っていない。

その疑問を解くために、ビッグエコーを運営する第一興商に取材を申し込んだ。すると、広報からすぐに連絡が入り、店舗事業推進部店舗企画課の川崎敏史さんが、ビッグエコー新橋烏森口店で取材に応じてくれた。

「実はオフィスボックスは昼間のカラオケボックスの有効活用として、2017年から一部の店舗ではじめたサービスなんです。テスト運用してみたところ、想定していた以上にお客様から好評だったので、2019年の秋ごろから全国約500店舗でオフィスボックスのサービスをスタートさせたんです」