シンガポールは「消費増税しません!」

(3)感染者情報と感染ルートの徹底公開

シンガポールの保健省(MHO)は、感染が確認された場合には、その情報を同省のウェブサイトで公開します。そこには、感染者の年齢や性別はもちろん、国籍と海外渡航歴、さらには勤務先の住所や居住地まで記載されることがあります。こうすることで感染が確認された人の近くに住む人へ警戒を呼びかける狙いがあるのでしょう。

また、感染者の行動確認調査も徹底的に行われ、感染元を特定したうえで、濃厚接触者と見なされれば、自宅隔離措置や出勤停止措置の対象になります。接触者特定のために政府は3月20日にアプリを無料配布。このアプリはスマートフォンに導入すると、近くにいた人を感知し記録し、もし感染者が出た場合は、アプリに記録された情報を元に追跡するというもの。

(4)市民生活への財政的支援

新型コロナウイルスの拡大に伴う経済的な影響と市民生活を考慮して、シンガポール政府は早々に、日本の消費税に当たる7%のGST(Goods and Services Tax、物品サービス税)の引き上げを21年には行わないと明言しました。これは、GSTが近々引き上げられるのではないかという懸念を払拭した形です。

さらに、企業が従業員を、解雇することを避けるための支援策として、20年末まで従業員の月給の25%を政府が肩代わりするほか、立場の弱いフリーランス(個人事業主)にも月額1000シンガポールドルを支給することを決めました。

シンガポールでは矢継ぎ早に各種の施策が導入されるので、先週施行された制度が今週にはガラッと変わる、などということは珍しくありません。現在では、カラオケやバーは4月末まで強制的に休業とさせられたり、10人以上の集まりは禁止されたりして市民生活にも大きく影響を与えていますが、「何としてもコロナウイルスの拡大を抑える」という政府の本気度が感じられるからか、不満の声はあまり聞かれません。

「すぐに導入する」という、そのスピード感と徹底的な措置に関して、日本が見習うべき点だと思います。

現金給付に際して所得制限を設けるのか、さらには現金ではなく商品券にしたらどうか、といった部分で議論するのではなく「一律に現金給付をする」そして「減税をする」ということを素早く決められないのが残念でなりません。

新型コロナウイルスに対する日本政府の一連の対応に失望したという日本国民は少なくないはずです。今回の危機を乗り越えた先の日本が、シンガポールのようにスピード感のある国になることを願っています。

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