スカイマークは全部門がひとつの会社の中にある
航空会社を運営するには、専門性の高い仕事をいくつも組み合わせなければならない。それはパイロットや客室乗務員、旅客スタッフのように乗客の目に触れる仕事だけではない。石田のようなスケジューラー、機体の整備、発着を支えるランプなど、部門は多岐にわたる。
スカイマークの特徴のひとつは、全ての部門がひとつの会社の中にあることだ。他社のような子会社はもっていない。社内が連携を深めた結果、定時運航率で国内1位を獲得したのは2017年、破綻から2年後のことだ。
佐山は2500人の社員に向けて、毎週月曜の定例メールで「ダントツの1位を目指そう」というメッセージを発信しつづけてきた。破綻前、スカイマークは「遅れ」と「欠航」で有名だったが、現在、定時運航率は国内1位はもちろんのこと、世界でも3位となった。
そして今回降って湧いた元旦の臨時便。疑問や違和感はありながらも、スカイマークのありようを変えた佐山への「恩」を返したいと石田は思った。
「ありがとう」と言われたような気持ちがした
結果は予想を超えていた。12月27日(金)午前11時に発売されると、臨時便は、天皇杯の観戦チケット付きの往復券100枚が2分で完売、残る77席も15分で売り切れた。
元旦9時、神戸空港から「5511(ゴーゴーイレブン)」という特別コード便で飛び立った177人の搭乗客は、全員が熱心なヴィッセル神戸ファンだった。見送りのスカイマーク社員たちに「ありがとう」「勝ってくるからね」と口々に話した。
石田は当日の様子をあとで聞いたとき、こう思ったという。
「日頃、お客さまと接することのない部署ですが、ファンの方々の様子を聞いて、ありがとう、と言われたような気持ちがしました。お客さまがスカイマークのファンになってくれたことが実感できました。やりきることができてよかったと心から思いました」
3カ月後の現在、石田は新型コロナウイルスの影響による運休や減便に伴い、忙しい毎日を送っている。減便の状況について佐山はツイッターに「2月の搭乗率が80.6%、3月が54.3%で、ここのところ40%台に低下してきたので、残念ながら、4月は約4割減便になります」(4月1日のツイート)と書いている。こんなことになるとは、元旦には予想もしなかった。先の見通しが立たないなかで、刻々と変わる運航予定に対応している。これは5年前とよく似ている。
だが、当時と現在では大きな違いがある。それは「ファン」の存在だ。