企業存亡にかかわる国際的取引の法務

内部統制の問題は、企業の国際的な競争力とも深く結びついてくる。その一方で法令の国際化も、今後のビジネスに欠かせない視点となる。そうした側面からお勧めする一冊が『リニエンシー時代の独禁法実務』だ。

リニエンシー制度は、06年の独占禁止法の改正で導入されたもの。企業が自ら関与するカルテルや談合等の情報を公正取引委員会に提供すれば、その企業の罰則が軽減されるという制度である。

この制度は、欧米でいち早く採用され、グローバル企業による国際カルテルまでがこれによって摘発を受け、関与した企業に巨額の課徴金が課せられている。こうした国際的な法改正の流れに合わせて、わが国にもこの制度が導入されたわけだ。

要点は国際的な取引において法的対応を誤ると、ときとして企業の存亡にかかわる制裁を受けることになりかねないということである。すなわち、国際的なビジネスにおいては、法務力が企業競争力を左右する時代になってきているのだ。

しかし、日本の企業は得てして法律、法務に対する意識が低く、社内に法務部がない、または法務部があっても弁護士を持たないというところが実に多い。本書はそのことをどう捉え、国際化に対処していくのかを解説した実務書である。

一般に、法律にかかわる書物は難解なものと思われがちだが、最近の法律関係書は読みやすく、特に専門的な知識がなくとも理解しやすいものが増えている。不況下で今後の増加が見込まれる企業倒産や、労働環境にかかわる書籍も一読すると、法律がより身近に感じられるだろう。