財産・資本の流動性は高まる
私有財産を禁止し、あらゆる財産・資本を「使用権のオークション」にかけることによって、それらの財産・資本は「もっとも効果的にそれらの財産・資本をもとにして経済活動を行える個人・組織」が活用することになり、結果的に財産・資本の流動性は高まる。また、それらの財産・資本の使用価値が低下してくれば、それらは改めてオークションにかけられ、結果的に高所得者から低所得者への財産・資本の移動が起きる。市場原理の働きをフルに利用する思想であり、そういう意味ではド真ん中の「資本主義」の考え方とも言える。
興味深いのは、著者らが提案するこれらの新奇(に思える)アイデアのほとんどが、実際には過去において提案、あるいはすでに実施されたアイデアである、という点だ。博覧強記と思しき著者の2人は、ありとあらゆる時代から事例のピースを引っ張ってきて主張の全体像を描き上げている。その点で、本書は「新しいアイデアを生み出すためには過去を知らなくてはならない」というリベラルアーツの教えの具体例とも言えるものだ。
閉塞状態にある時代において、著者の文字通り「ラディカルな提案」にはオプティミズムが満ち溢れている。一読をオススメしたい。